このサイトを見ているのは生命保険に関心のある人達ですが、保険の販売をしている人・アドバイスをしている人・自分の保険について情報が欲しい人、あるいは保険会社本社の人もいるかも知れません。 多分興味の多くは個人保険の分野だと思いますが、中には法人契約を取扱っている人、会社を経営していて自分の個人の保険もそうだけど、会社の保険についても情報を欲しい人もいるかも知れません。 2005年1月に日経新聞社から「会社の危機を救う 社長の生命保険」という本が出版されています。著者の亀甲 美智博(かめこう みちひろ)さんというのは、ソニー生命で保険の販売を経験し、保険代理店のグローバルインシュアランスの立ち上げに参加し、その後独立してコンサルティングをしている方のようです。 本の内容は中小企業のオーナー経営者向けの経営者保険に関する解説です。経営者の死亡保険・生存退職金準備・事業承継・相続対策・相続税対策・企業年金・従業員退職金制度・経営者の個人保険等々、経営者に関わる生命保険全般の説明になっています。 内容が難しいのを少しでもわかりやすくするために本を三部構成にして、第一部はコンサルタントと社長との対話という形で書いてあり、読みやすくなっています。第二部はQ&A方式で書かれ、第三部は具体例サンプルとして、様々なタイプの保険の設計書例を載せています。 このように読みやすくする工夫はされていますが、驚くことに第三部を除いて図が殆どありません。ただでさえ複雑な経営者保険の説明を、コンサルタントと社長の会話だけで説明しようとするのですから、知らない人が読むのはかなり難しそうです。 結果的に、経営者保険について知っている人が読めばわかるけれど、知らない人は多分読み通すことができないのではないかと思います。 ただし経営者保険を取り巻く様々なテーマについては一通り触れているので、どのようなテーマについて考えなければならないのか、どのようなテーマに生命保険が使える可能性があるか知ろうという目的であれば、役に立つかも知れません。 その意味では保険のセールスやアドバイスをしている方で、これから経営者保険にも取扱範囲を広げていこうかと考えている方には役に立つかも知れません。 第三部の設計書の部分は、きちんと理解している人の丁寧な解説付きでなければ、数字の羅列の意味を一般の読者が理解することは不可能だと思います。 一般の個人保険の設計書でも理解するのが大変なのですが、経営者保険の設計書はなおさら大変です。 結局、経営者保険をアドバイスする代理店が、そのアドバイスの参考資料として社長に説明しながら読んでもらうという使い方になるのではないかと思います。 本文の内容はほぼ妥当な解説になっていますが、ところどころ「あれっ」とか「ここはちょっと違うな」とか思われる所もあります。 また、変額終身保険の予定利率の高いことが何度も取り上げられています。この予定利率の高さは保険料率の安さと理解する分には正しいのですが、貯蓄としての有利さと考えるとこれは間違いですから、気をつける必要があります。 またその予定利率の高い変額終身保険も、4月からの変額年金等の責任準備金の積立てルールの変更に伴い、各社とも売り止めあるいは料率引上げになる予定です。この部分にも注意が必要です。