生保保険料改定で保険は見直すべきか by 柳澤美由紀(5)旧AIGスター(現ジブラルタ)

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生保保険料改定で保険は見直すべきか by 柳澤美由紀(5)

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生保保険料改定 あなたの保険は見直すべきか


2007年4月1日から保険料を改定。そんな生保が続出しています。現在取り扱われている保険の保険料がすべて変わるわけではありませんが、多くの生保で死亡保障タイプの保険を中心に値下げしているのです(一部の年齢を除く)。

なぜ、死亡保障タイプの保険を値下げしたの?

これって、見直しの好機?

今回はこの2点を中心に解説していきます。

なぜ、死亡保険の保険料が安くなったのか


 きっかけは、標準生命表の11年ぶりの改定です。

 標準生命表は、性別、年齢ごとに1年間に死亡する割合(死亡率)を一定期間観察して、各年齢で予測される死亡率(予定死亡率)などを一覧にした表のことです。

 不測の事態が起きたとしても契約にのっとった保険金を支払えるように、これだけのお金は積み立てておきなさいよ! と、国が生保に義務付けている「標準責任準備金」を計算するために使用されています。だから、保険業法第122条の2第1項の規定によって、金融庁の委託を受けた日本アクチュアリー会が作成することになっています。

これまでは、1996年に公表されたものが使われていました。「生保標準生命表1996(死亡保険用)」と「生保標準生命表1996(年金開始後用)」です。しかし今回の改定により、「生保標準生命表2007(死亡保険用)」と「生保標準生命表2007(年金開始後用)」、新たに「第三分野標準生命表2007」が作成されました。2007年4月1日から、これらをもとに標準責任準備金を計算することになっています。

これによって、どんな影響を受けるのか。


たとえば、生保標準生命表(死亡保険用)は、終身保険や定期保険などの死亡保障タイプの保険契約などの標準責任準備金を計算する際に使われます。

これまでの生保標準生命表1996(死亡保険用)は、1989〜1991年度(男子14歳以下、女子15歳以下は1986〜1991年度、0歳は1981〜1991年度)の保険契約がもとに作成されていて、はっきりいって、かなり古い内容でした。高齢化が加速している日本の現状を反映していなかったのです。

一方、生保標準生命表2007(死亡保険用)は、1999〜2001年度(男子15歳以下、女子19歳以下は1996〜2001年度。0歳は1991〜2001年度)の保険契約がベース。1996よりもデータが新しくなっているため、おおむね予定死亡率は低くなる結果になっています。

加速した高齢化を反映
=死亡する割合(予定死亡率)が下がる
=死亡保険の保険料を安くできる





<図表1:生保標準生命表(死亡保険用)2007と1996の比較>

 ★男性

 
 

2007の死亡率

 

1996の死亡率

対1996

25歳

0.00082

95%

0.00086

30歳

0.00086

102%

0.00084

35歳

0.00105

100%

0.00105

40歳

0.00148

95%

0.00156

45歳

0.00231

92%

0.00251

50歳

0.00365

96%

0.00379

55歳

0.00567

90%

0.00630

60歳

0.00834

82%

0.01022

65歳

0.01306

85%

0.01542

70歳

0.02193

88%

0.02506



 ★女性

 
 

2007の死亡率

 

1996の死亡率
 

対1996

25歳

0.00036

95%

0.00038

30歳

0.00049

107%

0.00046

35歳

0.00069

100%

0.00069

40歳

0.00098

93%

0.00105

45歳

0.00140

89%

0.00158

50歳

0.00216

93%

0.00233

55歳

0.00298

91%

0.00328

60歳

0.00379

81%

0.00469

65歳

0.00577

81%

0.00710

70歳

0.00914

76%

0.01202



標準生命表の予定死亡率が低下するということは、国が生保に積み立てを義務付けている「標準責任準備金」を減らせるということ。契約者から集める保険料を値下げしても、やっていけるようになったのです。死亡保険の保険料が安くなったのは、死亡保険用の標準生命表の予定死亡率が引き下げられたからなのです。


でも、すべてが安くなったわけではない



 標準生命表の改正は、死亡保険だけでなく、第三分野保険や個人年金保険の保険料にも影響を与えています。

第三分野標準生命表2007は、生保標準生命表2007(死亡保険用)よりも長生きリスクを多く見込んでいるため、以前使用されていたものに比べて、予定死亡率は2〜6割低下しています。医療保険は、病気やケガで入院したときに給付金が支払われる、いわゆる生前給付タイプの保険ですから、予定死亡率の引き下げは保険料の値上げ要因となります。

同様に個人年金保険に関しても、予定死亡率の引き下げは値上げ要因。では、実際にはどうなっているのでしょうか。生保各社が2007年1〜3月に公表した保険料改定に関するニュースリリースをもとに、全体的な傾向を図表2にまとめました(ホームページ上でニュースリリースを公開していない保険会社を除く)。みていきましょう。

<図表2:保険料改定の全体的傾向>

終身保険
定期保険などの死亡保険
保険料はおおむね低下(↓)※
医療保険保険料は横ばい(→)または低下(↓)
がん保険保険料は据え置き、または上昇(↑)
介護保険保険料は据え置き、または上昇(↑)
終身年金保険料はおおむね上昇(↑)
確定年金保険料は据え置きまたは横ばい(→)

 ※一部年齢は微増


 死亡保険に関しては、一部の年齢を除いて引き下げているところが大半でした(2007年3月7日現在で20社)。保険料が高くなるゾーン(年齢)をはっきりと明記した保険会社はほとんど見受けられませんでしたが、生保標準生命表から推測すると、男性で30〜34歳、女性で29〜34歳あたりではないかと考えられます。この年齢層では自殺による死亡が増えたため、予定死亡率が逆に引き上がってしまったそうです。保険料の引き下げ率は0〜20%程度。保険会社・保険種類・保険期間・年齢により異なりますが、終身保険に比べて一定期間の死亡保障を備える定期保険の方が、総じて引き下げ幅は大きくなっています。

死亡保険とは逆の意味で高齢化が作用した「終身年金」に関しては、据え置き(保険料を改定しない)または引き上げに(2007年3月7日現在で7社)。生死にかかわらず一定期間年金を支払う「確定年金」は、おおむね横ばいとなっていました。

医療保険は、入院期間の短縮化などの引き下げ要因と相殺されるかたちで、現行水準をおおむね維持(若干の値下げ、値上げをしたところも一部あります)。がん保険と介護保険は据え置きまたは0〜10%程度の引き上げとなっています(ただし、2007年4月ではなく、9月改定を予定しているところなど対応はまちまちです)。

 標準生命表の改定がきっかけといいながら、保険料改定に関する各社の対応は温度差がありました。どうも、保険料計算のベースになっている「予定死亡率」と「標準生命表の予定死亡率」が必ずしも同じではないということとが影響しているようなんですね。

 保険料設定のもとになる基礎率(予定利率、予定死亡率、予定事業比率)は、標準責任準備金を積める範囲で設定することとなっています。でも、標準生命表における予定死亡率を必ず使わなければいけないという決まりは、実はありません。生保が保険料計算に用いる予定死亡率に関しては、それぞれの生保の判断で設定してよいとなっているのです。

また、同じ保険会社・同じ保険種類であったとしても、年齢・性別・保険期間によって、どれだけ安くなるか(高くなるか)は違います。

AIGスター生命の無配当定期保険に35歳の人が加入したケースでみてみましょう。
(改定後/改定前)

  • 保険期間10年・・・(男性)97.7% (女性)96.8%
  • 保険期間20年・・・(男性)96.5% (女性)95.7%
  • 保険期間30年・・・(男性)90.3% (女性)91.4%


保険期間が長くなるほど、差が大きくなっていますね。しかし、65歳で加入した場合だと、まったく違う結果になっています。

  • 保険期間10年・・・(男性)87.4% (女性)79.3%
  • 保険期間20年・・・(男性)87.5% (女性)78.3%
  • 保険期間30年・・・(男性)92.3% (女性)85.7%


これから死亡保険に入るなら好機といえるが・・・


 死亡したときに保険金が支払われる終身保険、定期保険などの場合、3月までに比べて保険料が安くなっている確率が高いので、新規で入るなら今! と言えそうです。

でも、すでに入ったものを解約して、新しい保険に入りなおす見直しが、すべて吉とは限りません。いまの保険をいかして見直しを行ったほうが有利なケースがあるからです。

 掛け捨ての定期保険(特約)を見直す場合は、あと何年間、今の保険料(保障)が続くのかを確認しましょう。あと1〜2年で更新を迎え、その後も継続する・・・というのであれば、今から見直しに着手するのがベスト。でも、長期の定期保険(特約)を切り替える場合は必ず見積もりをとり、乗り換えたほうが有利であることを確認した上で手続きを行いましょう。

 終身保険の場合は、予定死亡率以外に契約時の年齢と予定利率の影響を大きく受けます。予定利率が高かった時代(預金金利が高かった時代)に入ったものであれば、そのまま継続したほうがトクです。1〜2年前に入ったものであれば、乗り換えることで保険料が安くなるケースもあるでしょうが、見積もりをとって確認することを忘れないでください。


2007年3月










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この情報は公開情報と独自調査によります。発売元保険会社のパンフレットや約款等によりご確認ください。


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