生命保険販売側の「告知義務」 by しごとにん(43)

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生命保険■独断解説

生命保険販売側の「告知義務」 by しごとにん(43)

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今回は少々根本的に保険の加入の仕方やとりまく状況について考えてみたいと思います。

この「保険選びネット」に出稿させていただいて丸3年経ち、業界事態はいい方向に向かっていると思いますが、根本的な構造は何一つ変わっていません。

現状は、自己責任を消費者に押し付け過ぎた反動なのか、保険業界では「不払い問題」が表面化して、いくらか消費者に有利な規制が増えて来た様に見えますが、根本的にまだまだ消費者にあまりにも不利な構造的な問題があります。

生命保険販売側の「告知義務」


生命保険の加入においての「重要事項説明」は何といっても「告知」についてです。

これについて今さらここで言うまでもありませんが、不払い問題に繋がった事柄であり、生命保険加入の前提となることなので生命保険が販売された時点の大昔から重要事項であったはずです。

被保険者に対しては、健康状態は元より、職業や収入、家族関係や趣味にいたるまで個人情報を根掘り葉掘り聞いた上で、それらに嘘があったら保険金や給付金がでない可能性がありますよ、というのが「告知」に関す重要事項説明の趣旨です。

翻って保険販売側における保険商品の構造や将来のシミュレーションについての、特にデメリットとなりえる事柄の説明を明確にすることが「生命保険販売者側の告知義務」のひとつであると思います。

例えば、死亡保障の特約に入院保障を付加した場合、死亡保障だけ解約して入院保障だけは残せない、また最低○○○○千万円の死亡保障がなければ日額1万円の入院保障は付けられない、など商品の構造上将来的にデメリットになりそうなことを保険会社や代理店側から説明する義務です。

今尚、大手国内生保で奨励されている既契約の「転換」による販売など、「生命保険販売者側の告知義務」を怠っているケースが多い典型だと思います。
予定利率の高い終身保険を解体したり、契約者のメリットが極めて乏しい10年更新型を拡販したりするのは、「生命保険販売者側の告知義務」を行っていれば絶対にできないことです。

実際問題としては・・・


誠に残念なことですが、「生命保険販売者側の告知義務」について、保険商品に関しては配当や運用益についてデメリットの説明を促すことぐらいしか規定がありません。

上記にあるような、入院保障だけ残すのも継続するのも困難になることが多いことが想定されるケースや、転換による不利益など、商品の構造上のデメリットを保険を販売する側が説明する義務は全くないのです。

また、以前にも触れたことがありますが、複数社扱う乗合代理店において、自社都合(手数料が多かったり、キャンペーンであったり)で、明らかに他にいい商品やプランがあるにもかかわらず、契約者にメリットが乏しい商品を強く勧めて販売したところで、現状では全く保険業法に触れません。

あくまで代理店の裁量という当局の見解です。

被保険者の告知義務や配当・運用に関することは全社共通であり、全社に同じ通達を出して取り締まることが可能ですが、生命保険商品特有の構造的な問題点について金融庁は片目ではなく両目をつぶっているような状態です。

明らかに悪質で、契約者が気付いて勇気ある行動に出た数少ないケースでお咎めがありましたが、「生命保険販売者側の告知義務」がきちんと遂行されていない大多数の隠れた事例があり、それはこの瞬間も増え続けています。

保険業界がひっくり返ってしまう!?


よく言われていることですが、国内最大手の生命保険会社と金融庁とのパイプは太く、その関係性が業界の動向を左右するとされています。
外資系やカタカナ・損保系などの新興勢力が突出した商品やサービスを提供すると、国内最大手生保の進言によって金融庁が通達などで圧力をかける、という構図です。

今回お話ししたことは、このケースの逆になります。

もし金融庁が商品の構造上のデメリットにおける「生命保険販売者側の告知義務」について通達を出すようなことになれば、自社都合にて手数料優先で保険販売をしている乗合代理店と大手国内生保は相当の圧力を受けることになります。

乗合代理店であれば心を入れ替えれば「生命保険販売者側の告知義務」を全うできる可能性がありますが、大手国内生保においては抜本的に商品や戦略、戦術、採算計画から人材まで何から何まで入れ替えなければ不可能です。
最悪の場合、現状のままであると大手国内生保のビジネスモデル事態の存在理由が問われるわけです。

金融庁の立場としては、国内有数の機関投資家である大手生保をつぶしたり、外資に売り渡すわけには行きません。
国内の金融マーケットを混乱させることに繋がるからです。
そこで、最大手の国内生保とのパイプを維持して持ちつ持たれつの関係を維持する必要があるように見えます。

まとめ


保険会社は、被保険者に対してもれなく「告知義務」を課してくるわけですが、保険商品に関する「生命保険販売者側の告知義務」は極めて不十分であることが認識いただけたと思います。

しかし消費者側には保険会社・商品を選択する自由と権利があります。
ただ、販売者側との情報格差があり対等とは言いがたいのが現状です。
仲介に入る代理店がきちんとしていれば問題ありませんが、残念ながらそれも期待薄です。

消費者側から保険会社に対する「告知書」をつくることを考えるべきかもしれません。


2008年3月










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