無選択型終身保険の比較 今回は、無選択型終身保険を取り上げ比較してみました。無選択型終身保険は、無条件で加入が可能な終身保険です。
無選択型の保険種類には、他に医療保険や個人年金保険があります。無選択型の保険種類に共通する特徴は、通常の保険種類と比較すると、保障の範囲が限定されていることです。(保険金額、付加可能な特約など)
一般的な無選択型終身保険の特徴を列挙すると以下のようになります。
- 医師の診査、告知(健康・職業)が不要
- 保険料建と保険金建がある
<保険料建>月々2,000円、6,000円など保険料を契約時に定める。保険金額は、契約時に定められた保険料と年齢・性別に応じて計算される。
<保険金建>保険金額は、通常の終身保険と同様な設定となる。保険料は、契約時に定められた保険金額と年齢・性別に応じて計算される。
- 高額な保険金額を設定できない(数百万円限度が多く、災害死亡で約1,000万円まで)
- 病気死亡の場合、契約時から2年以内だと保険金額は既払込保険料相当額になる(災害死亡の場合は全額保障)
- 高度障害保険金は支払われない
- 契約年齢が高い(40歳、50歳から加入など)
- 「リビングニーズ特約」や「指定代理請求特約」以外の特約が付加できない
@ 保障内容の比較(50歳女性―保険金額300万円の場合)
@ 保障内容の比較(50歳女性―保険金額300万円の場合)
| アフラック 終身保険 『どなたでも』無選択型
| 損保ジャパン ひまわり生命 『無選択型終身保険』
| 死亡したとき | 死亡保険金 | 病気死亡の場合 | 2,958,300円 | 300万円 | (2年以内の病気死亡) | 既払込保険料相当額 | 既払込保険料相当額 | 災害死亡の場合 | 11,833,200円(病気死亡の4倍) | 300万円 | 高度障害になったとき | 取扱不可 | 取扱不可 | 月払保険料 | 9,000円(終身払) | 20,760円(60歳払込)、8,754円(終身払) | 契約年齢
| 満40歳〜満80歳 (保険料による)
| 満40歳〜75歳 (保険金額・保険料払込期間による)
| 保険料払込期間 | 終身払 | 60歳払込、終身払 | 保険料払込免除 | 取扱不可 | 取扱不可 | リビングニーズ特約 | 取扱可 | 取扱可 | 指定代理請求制度 | 取扱可 | 取扱可 | 高額割引制度 | 取扱不可 | 取扱不可 | 他の保障への移行 | 取扱不可 | 取扱不可 | 死亡保険金の年金受取 | 取扱不可 | 取扱可(年金支払特約) | 自動振替貸付制度 | 取扱可 | 取扱可 | 配当金 | なし | なし | その他の特約 | 取扱不可 | 取扱不可 | 保障設定について
| 保険料建 月払2,000円から1,000円単位 (死亡保険金額30万円〜300万円)
| 保険金建 40歳〜60歳=500万円まで 61歳〜75歳=300万円まで
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※災害死亡=不慮の事故または所定の感染症で亡くなった場合 <不慮の事故>責任開始日以後の不慮の事故を直接の原因として、その事故の日から180日以内 <所定の感染症>責任開始日以後の所定の感染症(コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、SARS等)を直接の原因 ※病気死亡と災害死亡の保険金は重複して支払われない
では、実際の無選択型終身保険商品を比較してみましょう。
今回、取り上げたのは、アフラックの終身保険『どなたでも』無選択型と損保ジャパンひまわり生命『無選択型終身保険』の2つの商品です。(以下、アフラックの終身保険『どなたでも』無選択型→『どなたでも』、損保ジャパンひまわり生命『無選択型終身保険』→『無選択型終身保険』と表示、テーマの無選択型終身保険と区別するため『 』で括ることにします)
大きな違いは、『どなたでも』は保険料建、『無選択型終身保険』は保険金建での取扱いとなっていることです。
他に違っている点は、『どなたでも』の災害死亡保険金額は、病気死亡の保険金額の4倍に設定されていること、『無選択型終身保険』は保険金建なので保険料払込期間を60歳払済でも設定できること、『無選択型終身保険』は死亡保険金を年金形式で受け取れることです。
無選択型終身保険は、付加できる特約なども限られていますので、比較しても大きな差はないようです。通常の終身保険に適用される「保険料払込免除」、「高額割引制度」、保険料払込満了後の「年金支払移行」の取扱いはありません。
『無選択型終身保険』の60歳払済の保険料が高くなっているのは、短い期間に保険料を払い込む必要があるからです。
今回取り上げた2つの終身保険に関していえば、保険料建と保険金建のどちらを選択するかという判断になります。保険料建と保険金建の、保険料と保険金の割合はほぼ同じです。 保険料は『どなたでも』の方が若干割高となるものの(終身払で比較)、災害死亡保険金が約3倍分上乗せされて支払われるので納得できます。ただ、病気を原因とする死亡の確率の方が圧倒的に高く、災害死亡は確率が低いために保険金を高く設定できるともいえます。
あとは、保険料と保険金額の端数の有無の違いにより、保険料を家計管理しやすいとか、あるいは将来において保険金を活用しやすいとか、使い勝手の良さも関係してきます。 いずれにしても、保障ニーズを良く考えて検討することが必要です。
A 解約返戻金の推移(50歳女性―保険金額300万円、損保ジャパンひまわり生命の場合)
A 解約返戻金の推移(50歳女性―保険金額300万円、損保ジャパンひまわり生命の場合)
| 保険料払込期間別比較 | 60歳払済 | 年齢 | 保険料累計 | 解約返戻金 | 返戻率 | 50 | 249,120 | 180,780 | 72.5% | 51 | 498,240 | 410,400 | 82.3% | 55 | 1,494,720 | 1,293,660 | 86.5% | 60 | 2,491,200 | 2,280,180 | 91.5% | 65 | 2,491,200 | 2,395,110 | 96.1% | 69 | 2,491,200 | 2,491,380 | 100.0% | 70 | 2,491,200 | 2,515,260 | 100.9% | 79 | 2,491,200 | 2,714,880 | 108.9% | |
| 保険料払込期間別比較 | 終身払 | 年齢 | 保険料累計 | 解約返戻金 | 返戻率 | 50 | 105,048 | 46,860 | 44.6% | 51 | 210,096 | 140,220 | 66.7% | 55 | 630,288 | 428,820 | 68.0% | 60 | 1,155,528 | 778,140 | 67.3% | 65 | 1,680,768 | 1,124,550 | 66.9% | 69 | 2,100,960 | 1,414,710 | 67.3% | 70 | 2,206,008 | 1,486,620 | 67.3% | 79 | 3,151,440 | 2,088,420 | 66.2% |
※解約返戻率(%)=解約返戻金÷既払込保険料累計額×100 (上記表では「返戻率」と表示) ※解約返戻金額は保険会社で異なり、また上記金額は概算なので詳細は各保険会社に問合せが必要 終身保険なので解約返戻金が生じます。
次に、損保ジャパンひまわり生命を例に、解約返戻金の推移をみていくことにします。なお、解約返戻金の数値は概算となりますので、あくまで参考としてみていただき、詳細は各保険会社に問い合わせることをお勧めします。
表Aから、60歳払済の方が、保険料が割高になる関係で解約返戻金は多く、返戻率は高くなっています。
60歳払済の解約返戻金は、保険料払込期間満了の60歳まで上昇していきながら、69歳で返戻率が100%を超えます。一方、終身払の解約返戻金は一生涯にわたり少しずつ上昇していきますので、返戻率は100%を超えてはいかないようです。
個人が、終身保険で解約返戻金を活用するメリットの1つは、保険料払込期間満了後に解約返戻金をもとに年金移行できることです。ただ、『無選択型終身保険』に関しては、年金移行できない取扱いとなっています。
ということは、解約返戻金を期待するというより、保険料の支払い方に対する選択となります。つまり、保険料は高くなっても早くに支払いを終えたい場合は60歳払済を選択し、一生涯払い続けても保険料を安く抑えたい場合は終身払を選択するとよいでしょう。
注意点としては、短期間で解約した場合、解約返戻金はないかあってもごくわずかとなることです。解約返戻金額は、契約年齢、性別、経過年数などによって異なります。また、パンフレットなどにも注意書きされていますが、保険料の払込総額(保険料払込累計)が支払う保険金額を上回る場合があります。(表Aでいうと、終身払の79歳時)
B 無選択型終身保険を検討する前に まずは、医師の診査・健康告知を受ける通常の終身保険を検討してみて、契約できないようであれば、告知項目を少なくした引受基準緩和型の終身保険を検討してみることをお勧めします。
パンフレットに通常の終身保険の方が保険料は割安になると記載されています。
他にも、特別条件を付けて加入できる場合もあります。保険料を割増したり、保険金額を削減したり、既往症に関連した身体の一部だけ保障の対象から外す「部位不担保の設定」の方法をとったりします。
「部位不担保の設定」ですと、不担保になっている身体の部位以外は保障されますし、不担保期間が過ぎると通常と同じ保険金額の支払いを受けられる場合もあります。
あとは、保険にこだわらなければ、預貯金額を確認してみるのも良いと思います。
無選択型終身保険は、健康に不安がある人のために作られた保険なので、保障内容は薄く保険料は割高に設計されています。最初から無選択型終身保険ではなく、他に保障を得る方法を考えてから検討してみては如何でしょうか。
2009年6月
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