週刊ダイヤモンド 2010年3月20日号 春先になると経済誌等で保険の特集を組むのが恒例になっているようです。
その中で我等が「保険選びネット」が、週間ダイヤモンドの3月20日号「保険をリストラ」という記事にて辛口のサイトとして紹介されていました。
内容の大半は役立つ内容で、業界人も一般の方にもかなり参考になるものであると僭越ながら感じました。
しかしながら「辛口サイト」と評された訳ですから、部分的に捨て置けない箇所がありましたので今回は指摘していきたいと思います。
このサイトをご覧の方は、今回の「週刊ダイヤモンド」を読んでいらっしゃる方も多いと思いますが、読んでいなくてもご理解いただけるように指摘します。
以下、ページ順に記述します。
P48 保険解約のテクニックとして・・・
保険証券、印鑑、本人確認書類を持って保険会社の支社にアポイントなしで行くのがよい。
テクニックとして紹介するのなら、かなり不充分です。
まず、解約手続きを行っているのがほとんどの国内生保の場合支社で間違いないのですが、その下部組織である支部というのがあり、一般的に「近所の○○生命」として認知されているのがその支部と言うケースがほとんどです。
解約手続きができない支部に間違えて行ってしまって、解約の意思が担当者に知れてしまったらどうなるのでしょうか。
猛烈な解約阻止を受ける可能性が大です。
大手国内生保を窓口で解約するのは一発で決めなければなりません。
まずネットなどで支社の場所を確認して、匿名で最寄りの支社に(1)そこで解約手続きができるのか、(2)受付時間は何時から何時か、(3)必要な書類は何か、をきちんと確認しなければなりません。
また通常受け付け時間は15時までとなっており(ニッセイ保険プラザは18時まで)、夕方に行って支社は稼動していても手続きをしてもらえません。
必要書類はひとつでも不備があると手続きできませんので確認が必要です。 ここでは「銀行の契約者名義の口座がわかるもの」が欠けています。
また実際問題として契約者がご主人であることが多く、原則は契約者でないと解約の手続きはできないことになっています。
しかしながら、ご主人が仕事を抜け出して保険会社の支社に赴くことは難しいケースがあります。
そこで奥様が委任状を使って手続きするのが現実的となり、その際の委任状の書式など保険会社によってまちまちなので注意が必要です。
テクニックと言うなら、せめて委任状の活用ぐらいまで提示しないと意味がありません。
P49 大手国内生保で加入の割高で過大な死亡保障を見直す方法として「ネット生保の割安な定期型の掛け捨て商品などが検討に値するだろう」
と言っておきながら・・・
ただし、保険期間が10年で、10年後に更新時期を迎えるものであれば「確かに保険料はアップする。しかし、そのときには必要保障額も少なくなっているはず」と割り切り、減額して更新すればよい。
このアドバイスは健康上問題があって、新たに生命保険に加入するのが難しいが条件がつきそうな被保険者に限定してのものになってしまっています。
つまり、健康で自由に選択できる方のアドバイスとしては不適切です。
まず、前提で「割高で」となっているのにそれを10年続けろ、と言っているのがおかしいのと、「そのとき(10年後)は必要保障額も少なくなっているはず」と分かっているなら、現時点から逓減定期や収入保障を勧めるのが普通です。
割高な10年更新型定期保険と収入保障の「保障面積」を比べたらこんな頓馬なアドバイスはできません。
また、このアドバイスは大手国内生保の10年更新定期保険販売における常套句でもあります。
利敵行為に近いもので、なぜこのシーンで出てくるのか理解に苦しみます。
P52 30代で住宅を購入した夫婦に対しての保険見直しとして、なぜか
保険見直しの際は、三大疾病への備えを強化すべき
となり、
まずは預金がないので1000万円の特定疾病定期保険に入り、三大疾病にかかったときの当面の対応費用を手当て。さらにその後の生活費のため、収入保障タイプの保険にも加入・・・ (「オリックス特定疾病定期保険」1000万円20年と、同じく「大黒様(収入保障タイプ」年200万円60歳まで)
一般的な知識で素直に読むと、がん、心筋梗塞、脳卒中になったらもれなく1000万円が出て、その後の生活費の保障が60歳まで年間200万円出る、と解釈してしまいます。
ここでまず問題なのは「特定疾病定期保険」が三大疾病になったらすんなり給付されると思えてしまうことです。
業界では常識ですが、厳然たる「60日ルール」があり、心筋梗塞と脳卒中については給付に大きな制限があります。 それについて全く触れず、手放しで推進するのは問題があると思います。
また、この文章では収入保障が病気になって働けなくなった場合の給付されるようなニュアンスになっています。
あくまで死亡保障でありますので、「当面の対応費を手当て。その後生活費」ではなく、被保険者が亡くなった場合の保障と明記すべきです。
これではまるで大手国内生保の「眼くらましトーク」と同レベルです。 三大疾病に備えるならがん保険に特化するか、入院保険の一入院の日数を増やすか備えるオプションがあるもの(オリックス、アクサ、アリコなど)を選択するほうが合理的だと思います。
死亡保障を同時に担保するプランニングならまだ分かりますが、ここではそのことには触れていません。 (特定疾病は死亡保障でもあります)
P54 「長生き家系には払い済み終身保険」のサブタイトルで、奥様の医療保険の見直しとして・・・
10年間(55歳〜65歳)で保険料をすべて払い込んで、長生き時の支払総額を抑えるものだ。これで妻の老後は安心だと考えている。 (アリコの新終身医療保険に加入)
これは保険会社を大喜びさせるプランニングです。
もちろん100歳まで長生きして頻繁に入退院を繰り返せば保険会社は喜びませんが、それ以外のリスクはほぼ保険契約者が被ることになります。
まず保険料支払い中の解約返戻金と死亡保障は0で、支払った後の返戻率もかなり低く、契約者貸付もありません。(わずかな死亡保障のみあります)
つまり医療保険としては高額(15,937円/月)な負担になりますが、キャッシュフローが極めて限定されており、つぶしが利きません。
全面否定をするわけではありませんが、プランニングの大きなデメリットに全く触れていないのは如何かと思います。
65歳までの10年間で105歳までの50年間の保険料を支払うわけですから、貯蓄性が乏しいのでリスクのバランスが偏っていると感じます。
まとめ 残念ながら一流経済誌であっても、生命保険については、前記のようにつまらないミスリードが一部見られます。
紹介している内容がすべて悪いというわけでは、もちろんありませんが、どうしても見過ごせないところだけ指摘しました。
業界の現場では当たり前のことが、不充分なかたちで記述されていたのは見過ごすことはできません。
また、未だに「アカウント型」や「堂堂人生」が複雑で難しくてプロでもお手上げだ、などと10年前に発売された商品についてコメントしているのにも違和感がありました。
乗合代理店や外資、カタカナ、損保系の営業マンなら紙と鉛筆があれば「アカウント型」や「堂堂人生」を、1時間以内でお客様にわかりやすく解説してひっくり返すのが普通です。
正直に申し上げれば、今回の「週刊ダイヤモンド」の記事は、経済一流誌としては少々お粗末な部分があると言わざるを得ません。
きちんとした現場に精通したプロの監修があったのかいささか疑問です。
2010年4月
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