外資系生保ING生命が日本から撤退
こんどはオランダのING生命が日本撤退です。日本の契約件数は77万件、総資産は2兆8000億円です。既存契約の価値だけか、営業部門まで引き継ぐかはっきりしませんが、香港の実業家が数百億円で買い取るようです。シャープと台湾メーカーとの交渉を連想すれば、契約者は不安になって当然です。いったいどのような扱いを受けるのかは香港の実業家の気分次第でしょうか。(日経2012.9.7.)
外資系保険会社に多額の保険料を払い込むということはそんなリスクを覚悟することです。
保険毎日新聞2012年9月3日号には、台湾(日本ではありません)から撤退した保険会社のリストがあります。メットライフ・AIG・マスミューチュアル・エイゴン・INGです。 日本でのメットライフは旧AIG(アリコ)を買収して日本に進出したばかり。日本のマスミューチュアル生命は旧平和生命。ソニー生命と提携したソニーライフ・エイゴン生命は2009年設立です。
外資系保険会社の保険なんかに入っちゃダメだ!
アリアンツ生命保険は2011年9月1日に熊本ファミリー銀行と親和銀行の銀行窓口で変額年金保険の販売を開始しました。なんと同じ月、9月30日に日本撤退を発表しました。
2009年にハートフォード生命は大量の保険を売りっぱなしで祖国アメリカに逃げ帰りました。アリアンツも同様にドイツに逃げ帰ります。もちろん両社とも既存契約の維持管理は形式上残しますが、そんな状況で既契約者のためにどれほどの努力をしてくれるのでしょうか。期待する方が無理です。
アリアンツ生命保険の2011年3月末の契約数は3万件です。2010年4月から2011年3月までの新契約数は1万7千件です。つまり半数以上は契約して1-2年の契約ということです。逃げ帰るつもりならそんなに保険を売っちゃいけません。
熊本ファミリー銀行と親和銀行でアリアンツ生命に年金を託した契約者はどんな思いなのでしょうか。一時払いの変額年金で、最低額は300万円ないし3万ドルのようです。それだけの金額を日本から逃げ帰る会社に託してしまったということです。銀行はそんな保険会社と提携したことに責任は感じないのでしょうか。ちゃんと調べて提携したのでしょうか。「審査能力のない銀行」なのでしょうか。
アリアンツは世界70カ国で展開するヨーロッパの巨大金融機関です。それでも所詮日本に進出しても儲からなければ帰っていきます。ハートフォード生命はリーマンショック、アリアンツ生命は欧州経済危機が原因なのでしょう。自国の契約者は守るのでしょうが、アジアの片隅の契約者など守る気もないのでしょう。
アリコ、アフラック、プルデンシャルといった規模と歴史の保険会社ならともかく、「よく知らない名前」のカタカナ名の外資系保険会社は危ないと思いましょう。そんな保険会社に資金を預けるのならそれならそれなりの覚悟が必要です。
積立部分がなく解約返戻金のない少額の医療保険ならまだいいのでしょうが、それでもそのまま年齢が高くなると新しい医療保険への切り替えは、健康上の問題や保険料の水準から困難になってきます。
下のレポートの「INA生命」のように日本の大手保険会社が引き継いでくれるような「運の良さ」はもう期待できない時代なのです。
外資系保険会社が日本から逃げ帰るときには、それまでの保険契約を他の保険会社に引き継ぎました。しかしついに引き継がずに母国に逃げ帰った保険会社が出現しました。ハートフォード生命です。
どこも引き受けてくれる保険会社がなかったのでしょうか、既存契約の維持管理部門だけを日本に残して、つまり積立部分(責任準備金)部門の管理だけ続ける会社を残して、2009年に、アメリカ本国に逃げ帰りました。
維持管理部門は日本に残したといっても、どこまで本気で日本の契約者のために尽くしてくれるのでしょう。
ハートフォード生命は銀行の窓口で変額年金を売りまくりました。50万件を超える金額が日本に置き去りにされました。このハートフォード生命に財産を託したお年寄りは多いでしょう。
バードレポートメールマガジン20041125より転載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 外資系保険会社は大丈夫なの? ●「○○保険株式会社」と「○○保険会社」の違い ●ジャックウェルチとルイスガースナーのグローバル戦略 ●青い目の日本支社長や支店長はしょせん中間管理職 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「○○保険株式会社」と「○○保険会社」の違い
生命保険業界には多くの外資が参入しました。バブルの頃には、 エクイタブル生命、オマハ生命、コンバインド生命といった会社が 日本に進出して一般向けに生命保険を売りまくりました。これらの 会社はどこへいってしまったのでしようか。
最近ではスカンディア生命が東京海上のミレアグループに買収さ れました。外資が撤退するときには生命保険契約はどこかの保険会 社が引き継いでいますので、問題ないともうえますが、契約者とし てはたまらない不安を抱えます。
bird発行人には、20年前に「INA生命」という保険会社で契約した 医療保険があります。INA生命→INAひまわり生命→安田火災ひまわ り生命→損保ジャパンひまわり生命保険と保険会社の名前が変わり ましたが、無事に保障は途切れずに続きました。また外資から国内 損保大手に代わったのだから、まあ安心なほうですが、それでも契 約者としてはたまらない不安を感じます。
さて、日本の保険会社は例外もありますが「株式会社」か「相互 会社」です。例えば「○○保険株式会社」です。しかし「○○保険 会社」という「株式会社」のつかない保険会社もいくつかあります。 これは外国の保険会社の日本支店です。つまり日本法人ではないの です。
各会社について調べようとするとこれら外国保険会社の日本支店 は、よく分からない存在です。もちろん「○○保険会社」という外 国の会社自体は日本のトップ保険会社よりもとてつもなく大きく、 格付けはAAAだったりします。
だから安心なはずでも調べるとよく分かりません。日本の支店と しての格付けや会社の安全性をはかるソルベンシーマージン比率が 分かりません。まあ支店なのですから、なにかあれば本社が面倒見 るので大丈夫なのでしょう。
最近いろいろな保険会社を調べることをしています。外資のホー ムページは「商品」のことはよく分かっても、「会社」のことが分 からないことが、いくつもありました。
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●ジャックウェルチとルイスガースナーのグローバル戦略
日本向けに日本の消費者に対して、責任をもって商品を販売する のであれば、最低限、日本法人にして、日本向け・日本人向けに情 報を公開して、その上で日本向け・日本人向けに消費者満足を追求 すべきではないかと思います。
先日、シティバンクのプライベートバンク部門が日本から追放さ れました。単純にいえば、日本でのシティバンクの経営はアメリカ 本社の顔色を伺い、日本で利益を出すことが最優先課題であり、そ のために日本の法律や日本の消費者などどうでもいいと考えていた のでしょう。マスコミの報道などみると、シティバンク本部の利益 目標のためなら日本の法律など無視してもかまわないといった「無 法地帯」だったようです。 (「金融行政をナメきったシティ日本戦略の本音」 金融ビジネス2004.11.)
多国籍企業が海外の支店、例えば日本支社や日本法人をどのよう に考えているかは、功なり名とげて第一線を退いた大経営者の回顧 録が最適のようです。第一線を退いてはじめて本音が語れるのでし ょう。日産のゴーンさんは、まだまだ日本の消費者を気にしないと いけませんから、まだまだ本音を書けないはずです。
アメリカンエクスプレスからIBMに転じてねIBMを再生した 名経営者、ルイスガースナーは「巨象も踊る」という回顧録で本音 をズバズバ書いています。 IBMの本社から見て、外国法人はほおっておくと何をしでかす か分からない。だから信用してはいけない、と考えていたようです。
「わたしは各地の独立王国に宣戦布告した。IBMを世界全体で 産業別の組織に再編成することに決めたのだ。」
日本IBMもこの宣戦布告の対象のひとつとなったのでしよう。 そしてルイスガースナーのIBMはシティバンクのモデルを念頭 に置いてビジネスモデルの構築をしたようです。この回顧録の中で シティバンクのことが触れられています。
「シティバンクは地域ごとの組織から世界的な顧客志向の組織に 変わった。」
シティバンクのプライベートバンク部門の日本での惨状は前述の とおりです。そんなになってしまうようなところがIBMの見本だ ったのです。 (「巨象も踊る」 ルイスガースナー著 日本経済新聞)
さて次はGEのジャックウェルチ。GEの企業革命をなし遂げた 名経営者です。
「わたしはかねがね『グローバルな企業』といったものはないと 考えていた。企業がグローバルなのではない。グローバルなのは事 業のほうだ。各事業のグローバル化は、それぞれの事業のCEOが 責任をもつべきた…。」 (「ジャックウェルチ わが経営」 ジャックウェルチ著 日本経 済新聞)
ジャックウェルチとルイスガースナーの同じことを言っているの です。
ニューヨーク本社サイドの経営論としての是非はともかくも、本 社サイドではなくローカルサイド(つまり日本支店・日本法人)の顧 客にしてみればつらいものがあります。
本社サイドの事業になじまなければ、そのローカルサイドのこと など考えずに売却したり再編をするということですから。
ジャックウェルチのGEは日本の保険業界に参入しました。GE エジソン生命です。
しかし、東邦生命を引き継いで1998年に生まれたGEエジソン生 命の株式は2003年にGEからAIGに売られて、AIGエジソン生 命となりました。GEはあっという間に日本の保険マーケットから 撤退したのです。GEにとってグローバルな事業としてはGEエジ ソン生命は不要になったのでしょう。
グローバル企業にとっての日本戦略なんて、しょせんそんなもの なのでしょうか。日本の会社はその魂が日本から離れることはない でしよう。しかしこれらグローバル企業の日本支店や日本支社の青 い目のエグゼクティブに日本に骨をうずめる覚悟を求めることは無 理なことです。
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●青い目の日本支社長や支店長はしょせん中間管理職
日本支店や日本法人のエグゼクティブはニューヨーク本社の顔色 を伺っています。ローテーションのひとつとして日本に派遣された だけです。日本人のスタッフだって転職経験者が多いようです。
bird発行人も転職を繰返しましたし、それは悪いことでもなんで もありません、ただしその会社で生涯を終えようなどという考えは 強くないはずです。いい転職先があれば移っていきます。そのため にはいい評価をうることが優先で、そのためにはニューヨークに顔 を向けている上司に顔を向けなくてはいけません。
「何でも本社の都合を優先する結果、日本の顧客や従業員は置き 去りにされます。日本でいろいろな問題が起きるでしょ。例えば品 質が悪くてお客さんに怒られると、『それはグローバルスタンダー ドです』と言って、顧客の問題解決にあたろうとしない。 極端な話、本社の意向で突然日本市場から撤退することもある。 日本ゲートウェイやメリルリンチ日本証券などが事実上そうですよ ね。」 (「本気で株式を公開してみろ」日経ビジネス2004.11.8.)
bird発行人の会社では日本ゲートウェイのパソコンを何台か買い ました。まだ動いているのもあります。しかし2001年に日本ゲート ウェイは日本から撤退しました。撤退直前に買わされてしまいまし た。形式上アフターサービスは残したというものの、売りっぱなし で撤退していったのです。
ユーザーとしてはたまりません。そしてゲートウェイは2004年に あらためて日本に再参入とのことです。同社のホームページは笑わ せてくれます。「Gatewayはまもなく日本の皆様のもとに帰ってき ます…」と大きく書かれています。 http://www.jp.gateway.com/
ちょっと冷静さを失っての、ユーザーとしての率直な感想。 「フ・ザ・ケ・ン・ナ」「カ・エ・ッ・テ・ク・ル・ナ」。
アメリカ本社の経営者が変わる度に来たり帰ったりするのでしょ うか。多国籍企業なんてそんなもの
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