損保再編が進むとどうなる。損保寡占化の功罪

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生命保険■独断解説

損保再編が進むとどうなる。損保寡占化の功罪

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●激論…損保再編が進むとどうなるか。損保寡占化の功罪。

2009年7月11日の損保代理店の集まり「RINGの会オープンセミナー」はとても有意義でした。手弁当のRINGの会運営側の皆様ご苦労様
でした。
http://ring-web.net/os/09/

損保再編が進むとどうなるかのマクロの討論が白熱していました。テーマは「寡占化の功罪」。

損保業界の再編が進み銀行と同様にメガ損保3社時代になろうしています。

パネリストは、金融庁の金融審議会また保険ワーキンググループで再編自由化に向けて舵取りをしている中央大学の野村修也氏、それに保険アナリストの植村信保氏、損保業界出身の森崎公夫氏です。

議論の構図は理想論をかかげて自由化再編へと向かう野村氏 VS 現実は甘くないという植村氏&森崎氏。演壇上で火花が散っていました。


現状の損保業界は、損保会社が勝手におすすめ商品を作っている。

家電業界を見よ、家電量販店が消費者の声を吸い上げて、消費者パワーを背景に家電メーカーにいいものを作らせるという、製造(メーカー)と販売の分離が進み消費者にとってよくなったではないか。

日本の問題は家電量販店に相当する保険ブローカー制度が未発達で、ブローカーや保険代理店が力を持たず、そのために消費者からの声がブローカーや代理店経由で保険会会社に届かないことだ。

そのために保険会社が勝手におすすめ商品を作っている。保険会社は単にメーカーでいいはずなのだから、販売者の意見に従って消費者のニーズにしたがってもいいのにそれが成立していない。それ
どころか、一社専属の保険代理店が他損保と乗り合いをしようとする圧力をあけてくる。

損保再編をきっかけにそれが変わるかもしれない。



いやとんでもない。それどころではない。保険業界の寡占化が進むことで保険代理店の社員化が進んでいる。もちろん外部の保険代理店を固定給の保険会社社員にするわけではないが、品質やコスト
面から、何でも保険会社の言うことを聞く販売システムに転換させようとしている。つまり実質保険会社の社員化だ。

保険会社の数が減ることによって、保険代理店にとって選択肢が減る。自動車保険はまだ保険会社数が多いからいいけれど、企業向け商品はメガ3社に絞られてくる。それにより保険会社の競争が緩
やかになってくる。保険会社が楽になるということは、相対的に保険代理店に対して厳しい対応をしてもいいことになる。

誰のための損保再編なのか。顧客のためだというのであれば、今のままでもいいのではないか。

保険代理店の選択肢がなくなっているのだから。損保会社再編が消費者や保険代理店にとっていいことはないのではないか。保険の販売者はつらい立場になるだろう。



再編を推し進める側(野村氏)は旗色が悪かったですね。でもそれは仕方がないでしょう。

「損保業界、その代理店業界の実際はこうなんだ」という現実論からせめていくと、議論がかみ合わなくなってしまいます。とくに聴衆のほとんどは損保会社ではなく損保代理店です。

損保会社の立場としてはいいことであっても損保代理店としては厳しいのです。そもそも損保業界の再編というのは販売コストを含めて無駄を削っていくためのものです。端的にいえば損保再編は損保代理店を集約し小規模のところをつぶさせるためのものです。その損保代理店にとって、再編は何もいいことは何もないのが事実でしょう。もちろんそれが顧客にとっていいか悪いかは別ですが。

ただ現実には再編は進みます。植村氏や森崎氏が「何のための再編なのか」と言っても再編は確実に進みます。



再編に向けて損保代理店はなにをしたらいいのか。野村氏は丹念に答えようとします。

保険マーケットは縮小する。でも消費者の選択肢は保険だけではない。もっと広い選択肢から保険を選ぶのだろう。「私はどうしたらいいのですか」という消費者の問いに対して、保険をもその選択肢の一つとする広いフィールドで相手にしたらいい。

代理店は再編を待っているだけでいいのか。待っていると再編の失敗やデメリットのツケだけを保険代理店に回されるぞ。まっていては保険会社の一人勝ちになってしまう。やるべきことは、消費者顧客を味方につけることだ。

不払い問題などの原因は、無理なものを売ったり売らしていたりしていたことに原因があると損保会社も気付いている。それには保険会社のシステムから変えていくしかない。その時に保険会社は代理店にも聞いてくるはずだ。「世の中が求めているものは何か」。その時に消費者とつながっていなくてはいけない。それが消費者を味方につけることだ。



もっと広いフィールドで消費者と接したらいい、という野村氏に対して、森崎氏が切り捨てるような覚めた意見。

「そんなことを現場ができるはずない。それに、保険会社は儲かりすぎているから、わざわざ新しい分野に手を出さない。」

損保会社も保険代理店は大変な時代を迎えるのでしょう。



会場の聴衆はほとんどは保険代理店です。そもそも保険代理店のためのセミナーです。大多数は保険代理店の立場に立つ植村氏&森崎氏に感情移入をしていたでしょう。そんな場面で別の立場での逆
の論陣に立つしかなかった野村教授は大変だったでしょう。

保険アナリストの植村氏もいつもはもっと中立的なのに、今回は敢えてディベートをするがごとく、明確に損保代理店の立場から議論をしてくれたので、問題点が浮き上がって、とてもおもしろい議論になりました。






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