Q 告知すれば保険金はちゃんともらえるの?
A 事実に基づいて告知および請求することで、曖昧さは薄れてくるでしょう。
保険会社の保険金等の不払い問題が社会を騒がせてしまい、多くの契約者が契約してもちゃんともらえるのだろうか?などと漠然とした不安を感じているようです。本来支払うべき死亡保険金を支払っていなかったり、募集人が「告知しなくていい」と促して保険業法に違反する行為を行っていたりしたことについて、保険会社の内部の管理上の問題もあわせて、昨年以来、金融庁から問題指摘がありました。
それらを受けて、生保業界としての対応を再確認かつ統一すべく、このたび、生命保険協会が「正しい告知を受けるための対応に関するガイドライン(平成17年6月30日)」「保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン(平成18年1月27日)」を発表しました。以下、そのポイントを整理してみました。
正しい告知を受けるための対応に関するガイドライン 保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン
正しく告知をされるようにするためのポイント まず、告知の大切さを内外に周知徹底し、告知のしかたを明確にし、かつツールなどをわかりやすく改善することになっています。 →よって、契約者や被保険者は、告知内容について募集人に話してもダメ。 →告知する項目がより明確にされ、告知対象外と勝手に解釈されないよう記入例も作る。
〜例えば、告知の対象外となる事柄は現在、各社によって詳細が異なっています。〜
<A社の場合>:告知をする必要のない傷病などについて
・疾病の治療などではなく、健康増進のための市販ビタミン剤の服用 ・医師に処方されていない市販の薬の服用 ・医師の診療を受けていない疾病 ・その他、告知の必要のないもの…ものもらい・結膜炎・虫歯・歯そうのうろう・花粉症・おたふくかぜ・水ぼうそう・水虫・円形脱毛症・肩こり・四十肩・正常分娩など
<B社の場合>:告知対象外となる事象について
・医師による治療として処方されたものではなく、健康増進のための市販のビタミン剤 ・歯科医師による虫歯の治療・完治後の急性虫垂炎の手術・完治後のかぜ・円形脱毛症・色覚異常 ・現在、治療をうけていない花粉症や水虫
このように告知内容をより具体化した上で、顧客が覚えていない場合にも対応できるよう、事前に告知対象や内容について示しておく、即時の回答ではなく、時間をおいて確認してもらうなどの運行の見直しも検討されています。
また、傷病歴があっても加入可能な場合があることなどをお知らせし、募集人に対する教育もより徹底していくことが明記されています。
保険金等の支払について 支払いできない事由には、「告知義務違反解除」「免責事由」「重大事由解除」などがありますが、まず支払われないケースについて、通知や説明を徹底するとともに、実際の判断は事実にもとづいて、医師の診断書や病院への照会などにより、支払いの可否を判断することになっています。
一番気になるのは、告知義務違反解除でしょうが、告知義務違反には、以下に該当するかがポイントになります。
・告知書で質問した事項が事実と違う回答がある ・告知していない事項について、普通に告知していれば保険契約を引き受けられなかった ・告知をすべき人の重大な過失があった(少し注意すれば思い浮かべることができたかどうか、病名などを告知されていなくても身体の異常で自覚できたかどうかで判断)
なお、具体的な事例は分かりやすい説明のために適宜、資料に盛り込まれるようです。
<例> 契約加入前の「慢性C型肝炎」での通院を告知せずに加入し、加入1年後に「慢性C型肝炎」を原因とする「肝がん」で死亡された場合 ↓↓↓ 加入時の被保険者の健康状態について、正しく告知をいただく必要があり、事実と異なる内容を告知された場合には、契約は解除となり、保険金は支払われません。
ただし、告知義務違反の対象となった事実と、請求原因との間に全く因果関係が認められない場合には保険金等をお支払いします。(例えば、「慢性C型肝炎」に関係ない、「胃がん」で死亡された場合は支払われるなど)
なお、お客様の詐欺行為による無効が適用されて支払いができないというケースについては、どのような内容が詐欺無効とみなされるのかはモラルリスクを排除するために公開されません。
このように内容面では、告知や支払いについて原則に立ち返って環境づくりをし、経営上も運行のルールを厳守していくということで、特に大きくルールが変わったということではないと思います。ただ、今後は支払いについての理由がより明確になってくるので、従来のように曖昧さは減ってくるでしょう。
そして、契約者は、自分で説明資料などを理解することが必要になるとともに、どう判断して行動すればいいか不安なときは、アドバイスももらえるような信頼できる代理店さんなどをパートナーにつけておくことも大切になってくると思います。
マネーカウンセリングネットWealth ファイナンシャル・プランナー(CFPR)吹田朝子 2006年2月
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