年金保険の二重課税の判決解説(2) 坂本嘉輝 2/3
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年金保険の二重課税の判決解説(2) 坂本嘉輝 2/3

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年金保険の二重課税の判決解説(2) 坂本嘉輝 2/3


4.年金と年金受給権


さて上のみなし相続財産の所、「保険金」と書いてありましたが、「年金」とは書いてありません。どうしたもんでしょう。

相続税法第24条(定期金に関する権利の評価)という規定があり、通常、契約者・被保険者が死亡して相続人が年金を受取るような場合、この条の規定(計算方法)によりその年金を受取る権利(年金受給権)を評価し、それをみなし相続財産として相続税の課税対象額に算入することになっています。

ということは、少なくても年金受給権については「みなし相続財産」だということになります。

そこでまた「みなし相続財産の規定(相続税法第3条)」を見てみると、みなし相続財産となるものは、この条の第1項の第1号から第6号まで列挙されています。その第1号から第6号の中で、この年金受給権について関係ありそうなものを探すと、上記の第1号以外には該当しそうなものがありません。すなわち上記の第1号「死亡保険金がみなし相続財産になる」という規定で、「年金受給権もみなし相続財産になる」ということになっているようです。

さてそうすると年金受給権については、第1号の保険金としてみなし相続財産になったようですが、肝腎の年金の方はどうでしょう。

毎年受取る年金と年金受給権は「一体のものか・別々のものか」というのが裁判でも大きな争点になっているのですが、この年金は年金受給権により毎年年金支払日が来ると貰えるという性格のものです。

法律の世界では言葉を定義しないで使うと、その言葉の意味は一般的に日常使っている意味と解釈するというルールがあるようです。

だとすると「被保険者の死亡によって発生した年金受給権によって毎年受取る年金」という具合に「によって」が二重になっているのはつづめて、「被保険者の死亡によって毎年受取る年金」と言っても良いような気がします。
例えば地震で棚から物が落ちてきて頭にあたって怪我をした」というのをつづめて言うと、「地震で怪我をした」となるのと同じようなことです。

さてそこで、「被保険者の死亡によって受取る年金」となったとき、それは相続税法にいう「被相続人の死亡により受取る保険金」に該当するかどうかということになります。

こう考えると、「年金受給権は保険金」だという主張より「年金は保険金」だという主張の方がはるかにもっともらしい気がします。

そして、相続税法にいう「被相続人の死亡により受取る保険金」という文章には「いつ」という規定は
ありません。ですから被相続人の死亡により「その時」受取る年金受給権が該当するのであれば、被相続人の死亡により「その時以降将来的に10年間毎年」受取る年金も該当しそうに思います。
となるとこの年金は「みなし相続財産」で、所得税非課税ということです。
これはAさん側の主張ですね。

5.据置保険金のモデル


裁判では年金について「これは保険金の分割払だ」という考え方が示されています。ここでもう一つの考え方について検討してみましょう。

現在死亡保険金は被保険者が死亡したらすぐに払うことになっています。しかし技術的にはそのような制限は必ずしも必要ではありません。すなわち「被保険者が死亡したら保険期間満了時に死亡保険金を支払います」とか、「被保険者が死亡したら保険金受取人が20歳になった時に死亡保険金を支払います」とか、あるいは「被保険者が死亡したらその10年後に死亡保険金を支払います」とかの保険があっても、少なくとも保険としてはちっともおかしくありません。

お話の世界では、昔、王様が今わの際(いまわのきわ)に息子の王子に「お前が成人したらこの国をすべておまえに譲る」と遺言をするなんてことはごく普通のことです。

このような、即時払死亡保険金でなく、何年か期間を置いてから払う据置死亡保険金がもしあったとしたら、これは相続税法上どのように扱われることになるでしょう。

これこそ「被相続人の死亡によって相続人が(何年か後に)受取る保険金」ですから、税法の規定にぴったりの「所得税非課税のみなし相続財産」ということになりますね。
で、このような「据置死亡保険金」という考え方を使うと、今回の年金は

  1. 「被保険者が死亡したら すぐに払う230万円の死亡保険金」
  2. 「被保険者が死亡したら その1年後に払う230万円の死亡保険金」
  3. 「被保険者が死亡したら その2年後に払う230万円の死亡保険金」
  4. 「被保険者が死亡したら その3年後に払う230万円の死亡保険金」



「被保険者が死亡したら その9年後に払う230万円の死亡保険金」
という10個の(即時および据置)死亡保険金のかたまりと考えることもできそうです。
この場合、それぞれの保険金は所得税非課税のみなし相続財産ですから、その全体も所得税非課税のみなし相続財産ということになりそうですね。

年金を「保険金の分割払い」と考えるのではなく、「いくつもの保険金の集まり」と考えると今回の件もすっきり解決するかも知れません。

これも結論はAさん側の主張です。

6.最高裁の判決


上記のように相続税法と所得税法の規定を併せて読むと、「年金受給権は所得税非課税だけど、年金は所得(雑所得)として課税される」という国税側の主張も、「年金受給権も年金もみなし相続財産で所得税非課税だ」というAさん側の主張も、どちらも正しそうです。

このように同じ法律から二つの相異なる結論が出てくるというのは、その法律が矛盾しているということを示します。
そうなったら仕方がないので、どちらか一方を採用しておいて、できるだけ早急に矛盾している法律を改正して矛盾を解消することが必要です。

論理学の世界では「Aである」という主張と「Bである」という主張が矛盾している場合、どちらも正しいと仮定すると、「Cである」という主張が、それがどんなに奇想天外のとんでもない主張であってもそれを証明することができる、ということが証明されています。

たとえば「この矛で貫けない盾はない」という主張と「この盾を貫ける矛はない」という主張を組合せると、「三角形は四角形である」などということが証明できるということです。

これを税法に適用すると、矛盾している税法からどんな主張だって引っ張り出せるということになります。とはいえ税法というのは論理学の世界でなく現実の世界のことですから、あまり非現実的な議論にはなりません。

最高裁の判決は【年金受給権についてはみなし相続財産として所得税非課税、年金についてはそのうち年金受給権の取崩しにあたる部分は、すでに課税済みの財産の取崩しだから非課税、利息にあたる部分は新たな所得として課税】というものです。これは年金に対する税制のあるべき姿ということでこの部分についてだけ考えるのであれば、合理的な一つの素晴らしい解答になっています。

しかし裁判で問われているのは「税法のあるべき姿は?」ということではなく、「今の税法を根拠にして何が正しいのか?」ということです。

この最高裁の判決、税法のどこにそれが書いてあるんでしょうか。「年金受給権は所得税非課税」の部分は特に問題はないですよね。そのあと毎年受取る年金について「年金受給権の取崩しにあたる部分は非課税・利息にあたる部分は課税」という判断については、年金をこのように二つに分けるとか、分けた一方を非課税・もう一方を課税とするというのは、税法のどこに書いてあるんでしょうか。

仮にこのように二つに分けたとしても、年金受給権の価格の計算は相続税法では決まっていますが、所得税法には何の規定もありません。所得税非課税となる「相続により取得したものとみなされるもの」が相続税法の定期金の額の評価で規定されている金額の財産だというのは、どのような理屈なんでしょう。

Aさん側の主張も国税側の主張も、それなりに税法に則った主張です。その二つの主張が矛盾するからといって両方とも否定して、どちらでもない新たな主張をするためには十分な根拠が必要なはずです。

裁判所というのは、法律のあるべき姿を議論する所ではなく、既にできている法律にもとづいて何が正しいか判断するところのはずです。最高裁判所というのは他の裁判所とはちょっと性格が違って、できている法律が憲法違反ではないかどうかとか、地方裁判所や高等裁判所の判断が法律違反ではないかどうか判断する所だということです。

Aさん側の立場に立つと国税側の主張は税法違反ということになります。国税側の立場に立つとAさん側の主張は税法違反ということになります。最高裁の判決はAさん側の立場からも国税側の立場からも税法違反です(もちろん最高裁の判決の立場に立てば、Aさん側の主張も国税側の主張も税法違反です)。

このような状況で、Aさん側の立場・国税側の立場はそれぞれ現行の税法の規定にもとづいているものと考えられます。
それに対して最高裁の判決は税法の規定というより税法のあるべき姿にもとづいているもののように思えます。こんなことで良いんでしょうか。

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