テレビドラマ化されたこともあり、作家池井戸潤氏による半沢直樹シリーズが人気のようです。「俺たち花のバブル組」で金融庁に楯突く東京中央銀行営業第2部次長の半沢直樹のような人は保険業界にいないのでしょう(テレビは見ていないのて小説と設定が違うかもしれませんが)。それに「やられたら倍返し!!」などと本当にやったら会社クビだし…。銀行業界も保険業界も半沢直樹以外は、金融庁には反論できないようです。
金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」の報告書が公表されました。
下記の赤字部分のように、いよいよ当「保険選びネット」の終焉が間近になったようです。
金融審議会での報告書で保険業界はどう変わる
金融庁金融審議会の保険商品サービス提供についての作業部会が6 月11 日に報告書を公表しました。
大手生保がオブザーバー参加し、「契約者保護の観点からもっと厳しくするべき」。業界大手が監督官庁に規制強化を懇願するという珍しい業界です。
今回は保険ショップ規制強化により単一商品セールスレディ制の大手生保には朗報。保険サイトも規制されネット上で叩かれ続けた大手生保に朗報です。
昔の大手生保は「(愚かな)消費者を守るため」と、保険販売での他社商品比較販売を自主的に禁止し、比較を禁じることで高過ぎ保険料を消費者に強要し、 過剰収益を取り続けました。そんな悪行は金融自由化で終わったはずなのに昔のクセが抜けません。
ネット時代になり消費者は情報を駆使し賢くなりました。消費者は今もそんなに愚かなのでしょうか。
保険ショップ等での保険比較販売はどう変わる
以前は営業員が来て単一商品を推奨し契約を迫りました。それが自分でショップに相談に出向いて比較して選ぶようになりました。保険ショップは保険購買に革命を起こしましたが、出る釘になりました。
報告書では 「単なる保険代理店なのに、公正中立などと言うな。実際は儲かる保険だけ勧めたんじゃないのか。自分は代理店に過ぎないと説明し、何でその商品を勧めるか説明し、顧客に誤解させるな。」
「公正・中立」は誤認を招きますし、同じ保険なら儲かる保険商品に売りたくなるのも現実です。
米国ニューヨーク州は「私はあなたに保険販売して幾ら手数料をもらいました」と顧客への保険販売手数料の開示義務があります。英国は保険比較販売をする保険代理店が保険会社から販売手数料を受け取るのを禁止しました。つまり英国では保険料は販売手数料を削った安い保険料になり、保険代理店は顧客から助言料を受け取ります(日経2013.7.12.)。
顧客へのベストアドバイスを追求すればこうなります。残念ながら手数料開示はほとんど議論されませんでした。保険代理店に開示させればセールスレディにも開示させないといけないからでしょうか。
電話営業代行会社も保険比較サイトも「保険募集」
不動産は国交省のナワバリです。しかし金融庁は信託・ファンド等を素早く規制対象にすることで不動産証券化をナワバリ化し、規制領域を広げました。
先見性に欠けた国交省はナワバリを失いました。
「保険募集」は金融庁ナワバリです。報告書では「保険募集」概念を拡大し、規制領域を広げます。
保険代理店が外注する電話営業代行会社。成果報酬型広告料を払う保険比較サイト。保険提案までして代理店に顧客を引継ぐFP税理士等コンサル。
そのうち、保険成約等(資料請求だけでも?)に連動する報酬を受け、保険募集と一体性連続性がありそうで、具体的な保険商品の推奨説明を行うものは、総合判断で「保険募集」に該当させることにします。
他業界に置き換えましょう。
「いい不動産物件がありますよ」と伝える電話営業代行会社や物件検索サイトを不動産仲介とし宅建業法の規制対象とすることなのでしょう。
「あなたの相続税ならあの税理士さん」との税理士斡旋会社や税理士紹介サイトが総合判断されて税理士法の規制対象となることかもしれません。
他業界からはにわかに信じられません。
金融庁担当者によれば、保険マニアが自らのブログで特定商品を詳細に説明しかつ強く推奨しても保険会社とつながらなければ保険募集でありません。
逆に言えば具体的商品説明のあるブログに広告バナーがあれば保険募集として金融庁規制の対象。具体性のないサイト、言い換えれば具体的な保険選びの役に立たない保険サイトは広告しても規制対象外です。役に立たないサイトばかり増えそうです。
筆者は保険サイト運営者なので当事者です。費用をかけて原稿を集め、商品解析・独自比較・批判までする独立サイト運営に広告収入は必須です。規制となればそんな保険サイトは消滅の運命となります。
審議中でのある委員の発言です。
「私が恐れるのは、この保険募集行為概念が広がっていくと、世の中で広く行われているビジネスマッチング業務の枠の中から保険会社だけが抜け落ちてしまう。」
保険を扱うと金融庁規制がうるさいから、保険だけは業務枠から外せ、との動きへの警鐘です。
ビッグデータによるビジネスマッチングの時代です。そこで保険が抜け落ちれば、それは保険での競争がなくなることであり、それで過剰収益を享受するのは保険業界です。消費者ではありません。
バードレポート・トピックス版 2013.7.18号
当「保険選びネット」も運営を開始して11年になりましたが、上(赤字部分)のような事情から、役割を終えそうです。次はサイト運営開始翌年のメルマガです。ネットを通じて「人と生命保険とのよい関係」を目指して頑張りました。
メルマガから…保険会社の常識は非常識
「保険選びネット」のサイト立ち上げ時は悩みました。【生命保険の世界を変えたい…】。夢ばかりデカイのですが、収益モデルなど見えるはずもなく、出費がかさむばかりの、無謀な実験です。その上保険会社からは予想を超える総スカンです。これほどまで保険会社から嫌われるとは思いませんでした。
でも利用者からのお礼と励ましのメールが数多く入るようになりました。
消費者に役立つことができ、消費者が支持してくれるサイトができたなら、神様は私を見捨てはしないだろう…そう思うようになったら、悩みもなくサイト運営ができるようになりました。消費者が支持してくれないのならば、否応なく消え去るだけですから。
保険会社の有形無形の圧力をはねのけ(今では内容証明ぐらいではビクともしません)、独自保険比較や勝手糾弾を続けた数少ない保険サイトだったと思います。ご褒美も頂きました。
ただここまで遠慮なく書いたら各保険会社に嫌われ避けられるのも当然ですね。 森田富治郎 第一生命会長の経営資質?・だまされるな!学資保険
昨年の夏に検索エンジンの仕組みが変わり検索結果に表示されることが激減し、訪問者数も広告収入も激減、すでにサイト存亡の危機となっています。そして今回のワーキンググループのこの報告書がトドメとなります。金融庁の監督指針も変わるでしょうから、準備しないといけません。
管理人もいいトシですので生活もあり、テマヒマカネを掛けての無謀な実験も続けられません。はずかしながら、報告書の指示に従って「役に立たないサイト」に成り下がるかもしれません…。悩ましいところです。
応援いただいている多くの方々に心から感謝しています。
2013.7.31. 保険選びネット管理人 山浦邦夫
|