限定告知型終身保険は、保険会社によっては引受基準緩和型終身保険とも呼ばれ、医師の診査が不要で、健康告知を緩和、あるいは簡単な告知項目で健康に不安がある方でも加入しやすくなっている終身保険です。「限定告知(引受基準緩和)型」の保険には、他に医療保険があります。
また、通常の終身保険と健康告知が不要な無選択型終身保険の中間に位置づけられ、保険料は、通常の終身保険<限定告知型終身保険<無選択型終身保険と割高になっていきます。無選択型終身保険の詳しい内容は、商品比較 無選択型終身保険の比較をご参照下さい。 限定告知型終身保険の数はそれほど多くはありませんが、他の保険と比較する上で参考になりますので、特徴などを知っておくとよいでしょう。
一般的な特徴は以下のとおりです。
- 告知項目は2〜5項目と少なく、特定の疾病の病歴等に限定し、病歴の遡る年数が短い
- 保険金建と保険料建の2通りの設計がある※商品により取扱いは相違する
- 通常の終身保険と比較すると保険金額の上限が低い(特に病気死亡の場合、約1,000万円〜5,000万円まで。無選択型終身保険よりは高く設定可能)
- 高度障害保険金は支払われない
- 契約時から1年〜2年の保障が薄くなっている。死亡保険金の50%の支払い、あるいは保険料相当額となる(一時払保険料など)
- 障害状態による保険料払込免除と保険料に対する高額割引制度の適用がない
- 「リビングニーズ特約」や「指定代理請求特約」以外の特約が付加できない
※商品により取扱いは相違する
@ 保障内容の比較(50歳女性―保険金額300万円の場合) @ 保障内容の比較(50歳女性―保険金額300万円の場合)
| AIGスター生命 終身保険『あなたにも』 無配当終身保険(限定告知型)
| 富国生命 『ちょっとだけ告白』終身保険 5年ごと利差配当付告知項目限定型終身保険
| 死亡したとき | 死亡保険金 | | 病気死亡の場合
| 責任開始日から2年目以降の場合 300万円(基本保険金額の100%)
| 契約日から2年経過後 300万円
| | 責任開始日から1年目以内の場合 150万円(基本保険金額の50%)
| 契約日から2年以内 2,161,560円
| 災害死亡の場合 | 300万円 (1年目〜)
| 300万円 (1年目〜)
| 高度障害になったとき | 取扱不可 | 取扱不可 | 契約年齢 | 満50歳〜満80歳(U型) ※T型は満50歳〜満70歳
| 満15歳〜満75歳
| 保険料 | 月払保険料8,463円(終身払) | 一時払保険料2,161,560円 | 保険料払込期間 | 終身払、10年〜25年(5年きざみ) 65歳〜80歳(5歳きざみ) ※短期払は年齢による
| ― | 保険料払込免除 | 取扱不可 | 取扱不可 | リビングニーズ特約 | 取扱可 | 取扱不可 | 指定代理請求制度 | 取扱可 | 取扱不可 | 高額割引制度 | 取扱不可 | 取扱不可 | 他の保障への移行 | 確定年金(5年・10年・15年・ 80歳満了)
| 確定年金(5年・10年・15年)、 10年保証期間付終身年金(年金支払移行特約)
| 死亡保険金の年金受取 | 取扱不可 | 取扱可(年金支払特約) | 自動振替貸付制度 | 取扱可 | ― | 配当金 | なし | 契約後6年目から5年ごとに支払う | 設定できる保障
| 生存祝金(T型)※生存祝金なしはU型 災害割増特約(限定告知型)
| ― | その他の特約 | 取扱不可 | 取扱不可 | 保障設定について | 保険金建のみ 300万円〜1,000万円 ※保険金の範囲は年齢による
| 保険金建・保険料建※上記契約は、保険金建 一時払保険料≧80万円となるよう保険金を計算 保険金≧5,000万円※加入年齢により相違
| ※災害死亡の場合(災害死亡保険金)=不慮の事故により、その事故の日から180日以内の死亡のとき、 または所定の感染症による死亡のときに支払う
今回取り上げたのは、AIGスター生命「終身保険『あなたにも』」と富国生命「『ちょっとだけ告白』終身保険」の2商品です。
この2つの限定告知型終身保険の大きな違いは、契約年齢と保険料の払方、および契約日から1年〜2年以内の取扱いにあります。
「終身保険『あなたにも』」の契約年齢が50歳からと高くなっているのに対し、「『ちょっとだけ告白』終身保険」は15歳から加入できます。
「終身保険『あなたにも』」の保険料の払方は一時払のみとなり、契約日から2年以内に死亡した場合は一時払保険料と同額の支払いとなるのに対し、「『ちょっとだけ告白』終身保険」の払方は、平準払(月払・半年払・年払)と一時払の選択が可能、契約日から1年以内に死亡した場合は50%支給となります。
そして、「『ちょっとだけ告白』終身保険」は一時払なので、保険料払込期間と自動振替貸付制度の取扱いはありません。
共通しているのは、生存中に死亡保障にかえてその時の責任準備金等(解約返戻金)をもとに年金を受け取る保障内容に変更できることです。その場合、年金年額は年金開始時における基礎率等(予定利率・予定死亡率等)により、新たに計算し直され、最低年金額や被保険者の年齢と契約時から移行できるまでの年数が決まっています。保険料払込期間が終身払の場合は年金移行の取扱いはありません。
「終身保険『あなたにも』」は、保険料払込満了後に年金開始される時点の年金年額の試算をして年金移行の可否を判断し、「『ちょっとだけ告白』終身保険」は、年金年額20万円以上で被保険者年齢50歳以上かつ契約日より5年以上経過していることが条件となります。
また、ともに解約返戻金を一時金で受け取り、老後資金に役立てるとしています。ただ、契約後短期間で解約すると、解約返戻金はほとんどないか、払込保険料より少ない金額となる場合が多いので注意が必要です。
あと、商品性の異なったところを挙げてみました。
★「終身保険『あなたにも』」- 基本保険金額(死亡保険金額)の10%を「生存祝金」として支払う
T型とU型があり、T型のみ80歳と88歳となった直後の契約応答日まで生存している場合に、契約者から請求があるまで所定の利率による利息を付けて据置きます。 - 災害割増特約(限定告知型)を付加すると、災害死亡の場合は倍額保障となる
★「『ちょっとだけ告知』終身保険」- 資産の運用成果により剰余金が生じた場合、契約後6年目から5年毎に配当金を支払う
積立配当金=配当金に利息を付けて積み立てたもの※運用実績によっては0円となることもある - 死亡保険金を年金で受け取ることも可能(年金支払特約)
年金支払開始時における基礎率等で年金年額は計算され、年金年額30万円以上であることが条件となります。年金で受け取ると、年金受給権の評価額(相続税法第24条)が適用され相続対策にもなります。※税法は、将来変わる可能性がある
A 保険料・解約返戻金の推移(50歳女性―保険金額300万円) A 保険料・解約返戻金の推移(50歳女性―保険金額300万円の場合)
| 終身保険『あなたにも』 | 65歳払込満了 | 70歳払込満了 | 経過年数 | 年齢 | 保険料累計 | 解約返戻金 | 返戻率 | 保険料累計 | 解約返戻金 | 返戻率 | 1年 | 51 | 178,000 | 50,000 | 28.0% | 144,000 | 18,000 | 12.5% | 5年 | 55 | 892,000 | 636,000 | 71.3% | 723,000 | 473,000 | 65.4% | 10年 | 60 | 1,785,000 | 1,439,000 | 80.6% | 1,446,000 | 1,085,000 | 75.0% | 15年 | 65 | 2,678,000 | 2,292,000 | 85.5% | 2,169,000 | 1,712,000 | 78.9% | 20年 | 70 | 2,678,000 | 2,415,000 | 90.1% | 2,892,000 | 2,415,000 | 83.5% | 25年 | 75 | 2,678,000 | 2,535,000 | 94.6% | 2,892,000 | 2,535,000 | 87.6% | 30年 | 80 | 2,678,000 | 2,646,000 | 98.8% | 2,892,000 | 2,646,000 | 91.4% | 35年 | 85 | 2,678,000 | 2,744,000 | 102.4% | 2,892,000 | 2,744,000 | 94.8% | 40年 | 90 | 2,678,000 | 2,823,000 | 105.4% | 2,892,000 | 2,823,000 | 97.6% | 45年 | 95 | 2,678,000 | 2,883,000 | 107.6% | 2,892,000 | 2,883,000 | 99.6% | 保険料 | 月払14,883円 | 月払12,054円 |
| 終身保険『あなたにも』 | 『ちょっとだけ告白』終身保険 | 終身払 | 一時払 | 経過年数 | 年齢 | 保険料累計 | 解約返戻金 | 返戻率 | 保険料累計 | 解約返戻金 | 返戻率 | 1年 | 51 | 101,000 | 0 | 0.0% | 2,161,560 | 2,077,200 | 96.0% | 5年 | 55 | 507,000 | 269,000 | 53.0% | 2,161,560 | 2,163,900 | 100.1% | 10年 | 60 | 1,015,000 | 644,000 | 63.4% | 2,161,560 | 2,271,900 | 105.1% | 15年 | 65 | 1,523,000 | 989,000 | 64.9% | 2,161,560 | 2,384,400 | 110.3% | 20年 | 70 | 2,031,000 | 1,332,000 | 65.5% | 2,161,560 | 2,498,100 | 115.5% | 25年 | 75 | 2,538,000 | 1,664,000 | 65.5% | 2,161,560 | 2,608,200 | 120.6% | 30年 | 80 | 3,046,000 | 1,972,000 | 64.7% | 2,161,560 | 2,709,000 | 125.3% | 35年 | 85 | 3,554,000 | 2,241,000 | 63.0% | 2,161,560 | 2,793,300 | 129.2% | 40年 | 90 | 4,062,000 | 2,461,000 | 60.5% | 2,161,560 | 2,858,700 | 132.2% | 45年 | 95 | 4,570,000 | 2,628,000 | 57.5% | 2,161,560 | 2,910,300 | 134.6% | 保険料 | 月払8,463円 | 一時払2,161,560円 | ※解約返戻率(%)=解約返戻金÷既払込保険料累計額×100 (上記表では「返戻率」と表示) ※解約返戻金額は保険会社で異なり、また上記金額は概算なので詳細は各保険会社に問合せが必要 ※解約返戻金額は契約年齢、保険期間、経過年数等により異なる
保険料・解約返戻金の推移を、異なった保険料の払込回数(年数)で比較してみました。
まとめて支払うほど1回の保険料は高くなります。「終身保険『あなたにも』」の場合は、65歳払込満了の保険料が一番高くなり、終身払が一番安くなります。
それと比例して、将来支払う保険金のための責任準備金が早くに積み立てられるために、解約返戻金も早い時点で多くなり、返戻率も100%を超えてきます。<表A>をみてもわかるように、返戻率が一番高くて100%を超えるのが早いのは一時払で、月払の中では65歳払込満了となります。
終身払は、契約後1年は解約返戻金が0円となり、返戻率は70歳〜75歳をピークに徐々に減っていきます。
限定告知型終身保険の比較 2/2 へ続く
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