生命保険年金二重課税との最高裁判決と還付(3)

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生命保険年金二重課税との最高裁判決と還付(3)

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「生命保険年金は二重課税との微妙な最高裁判決と還付(1)」
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「生命保険年金は二重課税との微妙な最高裁判決と還付(3)」
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生命保険年金は二重課税との微妙な最高裁判決と還付(3)


ある保険業界紙には次のような記事がのりました。


高裁の判決が出た時の、ある税理士のプログである。「地裁判決には驚かされたが、高裁判決は極めて常識的判断に落ち着いた。」

国よりの税理士なのだろうか、あるいは実務家である税理士が、訴訟などの判断(違法ではないとする本質の議論)をすること自体が不向きなのではないか。

また、あるFPは「長崎地裁判決支持、極めて常識的な判決で実社会と税制の不備を正す判決として評価されるべき」。こちらの方が常識的であり、大衆的である。



専門家で意見が分かれるのは当然として、このような考え方もあるのでしようね。

しかし、前々ページ、前ページで記してきましたように私はこの最高裁判決はおかしいと思っていますし高裁判決の方が妥当だと今でも思っています。一介の税理士にすぎないのですが、ここまでのようにつらつらと考え続けてきました。

ただ繰り返しますが、「税金が安ければいい。かからないほうがいい。」という議論は別だと思っています。「税金などない方がいいし、いつまでも消費税が上がらない方がいい」に決まっていますから。

しかし最高裁が何らかの判断したのならそれで決まりですし、実務は有無を言わさずにそうなっていきます。

専門家が記事のような意見をもたれるのはいいとして、心配なのは税の本質での議論をしないまま、保険商品設計をして保険販売をしていくという保険業界です。

前々ページでも触れましたが、この事例の出発点は保険事故発生時の契約者助言ないしは保険商品設計の問題だったと思っています。それは保険営業現場の問題ではなく、本社サイドの問題です。

必要なのは本社サイドとしても本質を見据えバランスのとれた見識を持ち、その上で顧客のためにも保険会社や営業現場にとって有利有益なものは、たとえ税理論から見ればおかしくとも、ビジネスとしてうまく使っていく姿勢だと思います。特に節税系の保険商品販売では、本社サイドが無理な現場要望に引っ張られていて、時に異様な保険商品を開発してしまうというのが実態ではないでしょうか。

ちゃんと「本質」を考えていれば税リスクが見えてきます。そのリスクはお客様が負わされるリスクです。常識的大衆的な判断だけでなく本質を見ようとしなければそのリスクは見えません。

不動産や不動産業界をビジネスの主戦場とする私にとっては、保険業界や保険プロの税務への考え方にとても不安を感じます。以下の文章はその昔、別のところに書いたものです。問題とした相続税法26条も24条もその後に予想通りに法改正となっています。




不動産に比べると、保険の税務、特に相続税は極めて簡単であり、かつ表面的です。

また、不動産の税制は猫の目のように変わり、それが当たり前だと思われています。一方で生命保険についての税制改正はほとんどありません。

そのせいなのか保険業界の方が相続税評価減を使った相続コンサル営業をする場面に立ち会うと危うさと甘さを感じます。

「法律がこうなっているから大丈夫」と説明されますが、法律がそのまま続くという保証はありません。また法律がそうなっていても「本当に故人の行為なのか」という実態が税務調査の場面で厳しく問われます

不動産業界での相続コンサルの方はこのあたりの恐さを経験的によく知っているようです。そして不動産そのものが個別性があり複雑な為か経験がない方でもリスクを考えようとする姿勢が見えます。一方保険業界の方は商品に個別性がない為か対応がマニュアル的で形式的です。


相続税対策を考えるときに大切なのは「常識」です。普通に考えてこの評価は低すぎる、と思ったならその評価は「常識外れ」でありリスクを負っています。

何も知らずにリスクを負わされた顧客は悲劇を迎え、顧客にリスクを負わしたコンサルは損害賠償請求の恐怖を味わいます。

「相続税対策に必要なのは「常識」…生命保険での節税策改正?」
バードレポート2000年9月25日号


「生命保険を使った相続税節税手法はいつまで大丈夫か?」
バードレポート第177号1997年9月22日


「変額年金での相続税対策…「年金受給権の評価」の未来は?」
バードレポート第497号2004年5月17日







不動産税制は複雑で猫の目改正ですし、それが当然と思われています。
不動産そのものに個別性が強いこともあり、不動産関連コンサルタントは節税話法に慎重です。

また買換え特例など多くの不動産税制は趣旨等の大きな視点から判断もできます。一方で保険税制は単純で改正もほとんどありません。通達での極めて細かい規制も多く大きな視点そのものが存在しません。

そのためか保険関連のコンサルによる節税話法は極めてマニュアル的で、不動産のそれに比べ危うさが漂います。「通達がこうなっているから大丈夫」…通達が続く保証などありません。

……

保険業界の税務対応は目を覆いたくなるものもあります。傷害保険特約が損金になるとの通達はあります。しかし単体の傷害保険は通達がありません。

「似たようなものだろ…」ということで、何社もの保険会社が損金となる前提で「節税できます」として長期の傷害保険を売りまくりました。各社お互いに「あの保険会社がやっているなら大丈夫だろう…」で、どこも確認を取らなかったようです。

そして国税庁は「そんなのはOKなどしていないぞ」。
全額損金として販売したものが4分の1だけ損金と決まりました。

「そもそも長期傷害保険の保険料を全額損金算入できるという税務解釈は生保側の思いこみだったという。」 (日本経済新聞2006.10.7.) 単なる思い込みですから過去分まで問題とされるかもしれません。なんとも情けない話です 。


「逓増定期保険の節税規制…保険業界の節税提案の危うさ」
バードレポート第637号2007年4月16日




2010年10月20日に国税庁は
「相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱いの変更について」
を公表して、還付手続きを開始しました。


「相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱いが変更になりました」
というポータルサイトを開いています。

相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の雑所得の金額の計算書(本表)

本来あるべき定期借地権課税のような難しい算式でなく、指折り数えるような簡易な方法になっています。皮肉なことに不動産である定期借地権課税で年金を計算する「年金現価率」を使って、本当の年金では「年金現価率」を使わない簡易計算になりました。

記載例は次の3例ですが、保証期間付の年金等にも対応できる計算方法になっています。ネット上での『保険年金の所得金額の計算のためのシステム』も用意されるようです。


記載例(確定年金)記載例(終身年金)記載例(有期年金)


年金の場合には一時金を分割払いにしただけで数理的にも金額的にきっちり算定されている、ということでしょう。それならば有期(年数限定)の年金受給権はいいとして、終身年金(死ぬまで支給)の受給権はどうなるのでしょうか。いつまで生きる次第で価値は変わり「アヤフヤ」なものです。終身年金は不動産同様に結果がアヤフヤです。


と、前のページで記しましたがこの問題は解消されていません。(なお上記の「有期(年数限定)の年金」とは国税庁HPでの「確定年金」です。「有期年金」ではありません。厳密な用語使いを間違えたようです。お許しください。)。

終身年金は平均余命のような残存年数を使って支給期間を仮計算しています。記載例では51歳に年金受給開始だと26年つまり77歳までと考えます。平均余命なのでしょう。

例えば年金受給開始から5年後に受給者の相続が開始すると5年間だけしか受け取れずそれ以降部分に対応した相続税課税部分は控除できません。考え方によってはその5年分の雑所得課税分は過払いになってしまいます。

5年分の年金が相続税課税価格より低ければ過去5年分(初年度は課税なしですが)の雑所得課税の所得税の還付請求も考えられるのではないでしょうか(まあ従来の年金雑所得課税でも生じている問題です)。ただ実際にはトンチン年金のような保証期間なし終身年金が珍しいので大きな問題にはなりにくいからいいのでしょうかね。

2010.10.22 保険選びネット管理人 山浦邦夫

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