生命保険の告知義務と告知義務違反 「生命保険に入る」とは保険会社との間で生命保険契約を締結するということです。
「告知」について保険約款を見ると次のようになっています。
- 保険契約締結に当たっては、告知することを要します。
- 黙っていたりウソをついたら、保険会社は契約を解除できます。(つまり保険金や給付金を払いません)
告知してください。ただ黙っていたりウソだったら払いませんよ、ということです。これをもって告知義務といわれます。
なお保険の営業員さんが、黙っていたりウソを顧客に勧めたら、それは所属する保険会社から厳しく処分されて当然です。しかし顧客に対しての罰金等の処分などありえません。上記の保険約款の範囲内にしか過ぎません。
質問もありどこまで正直に答えたらよいのか、と迷う方も多いようですが、正直かどうかでの結果の違いはここにあります。そしてどうするかは自己責任です。
ある保険の告知書をみたら「3ケ月以内に医師の診察を受けていないか」とあります。2ケ月半前に診断を受けていたのなら、あと1ケ月まって告知しましょう。「受けていない」と。これはウソではありません。
「5年以内に7日以上の治療を受けていないか」あと1ケ月で5年経過するのならば、1ケ月まてばいいでしょう。
書面による告知とは、自分の健康状態の現在過去すべてを開示するものではありません。書面による質問に答えるだけのものです。
告知書例(ご覧のこのページの下部に飛びます)
●告知等の方法
告知には上記のように(1)告知書を出すだけの場合や、(2)健康診断書を求められたり、(3)面接士といって健康状態を尋ねる専門職の人に尋ねられたり、(4)保険会社の指定する医師の健康診断を受けたりすることがあります。
保障額によって違うことがあります。死亡保険金が幾らまでなら告知書のみでOKでいくらになったら医師の診断、ということがあります。その違いを意識して保険を申し込みましょう。
人間ドックの診断結果表には注意しましょう。人間ドックとは悪いところをさがすためのものです。悪いところを見逃してはいけません。ちょっとでも悪ければ指摘されます。生命保険では、できれば悪いところを見つけて欲しくないものです。人間ドックの診断結果表とは目的が違います。
保険金額が大きな場合には、保険会社の医師や保険会社と提携する医師の診断があります。契約者が病院等に出向くこともありますし、医師が契約者宅に出向いてくれることもあります。
血圧が高めならば、前の日から安静にしている時間帯に、自宅に医師に来てもらい何度か血圧を測ってもらいましょう。(もちろん、可能であれば、ですが。) 自宅で落ち着いていれば血圧は低めに出るでしょう。会社でイライラするような仕事の合間に血圧を測るのとは大違いです。病院に出向いて若い看護婦さんにはかってもらうと血圧が高くなってしまう方もいるようですし…
医師によっても違います。医師を手配するのは保険の営業マンのことも多く、どの医者の判定が厳しいか甘いかをよく知っている営業マンもいます。
医者にとっても営業マンに嫌われることは避けたいもののはずです。保険会社の立場もありますから無理はできないものの、微妙な判断はたくさんあるはずです。
面接士とは医者ではありませんが、健康状態等について面接して確認する専門職です。顔色を見て、環境を見て、会話をして、健康等についての質問をして、判断します。なお健康状態ばかりでなく職業等も注意してチェックされます。契約申込書には「会社員」とあっても「危ない」職業かもしれませんから。
生命保険の告知義務違反 生命保険申し込み時は告知をします。病歴や健康状態や職業等を記入したり、保険会社指定の医師に話したりします。
日本生命の有配当終身保険(H11)普通保険約款(平成23年4月1日現在)
●告知義務
「保険契約者又は被保険者は、保険契約の締結、復活または特約の保険金額等の増額の際、保険金、年金もしくは給付金の支払事由または保険料の払込の免除事由の発生の可能性に関する重要な事項のうち、会社所定の書面で質問した事項については、その書面により告知することを要し、また、会社の指定する医師が口頭で質問した事項については、その医師に口頭で告知することを要します。」
ここでウソをついたり黙っていたりすると保険法55条により契約解除されます。なお保険法とは保険についての日本での法律の定めです。
「告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、生命保険契約を解除することができる。」保険法55条
そしてこの解除権は、生命保険契約締結から5年を経過すると消滅します。 (なお保険会社側が不告知や不実告知を知っていたり、保険営業員が告知を妨げたり(「黙っていたください」)、不実告知を勧めたり(「そこはこう言って下さい」)していた場合は保険会社は解除できません。)
5年内に保険会社に知れれば契約を解除されます。そして保険会社は各社の保険約款で5年を2年に短縮しています。
日本生命の有配当終身保険(H11)普通保険約款(平成23年4月1日現在)
●告知義務違反による解除
保険契約者または被保険者が、前条の規定により会社が告知を求めた事項について、故意または重大な過失により事実を告げなかったかまたは事実でないことを告げた場合には、会社は、将来に向かって保険契約または付加している特約だけ解除することができます。
●保険契約を解除できない場合
保険契約か、責任開始の日からその日を含めて2年をこえて有効に継続した時は…保険契約を解除できません。
何事もなく2年経過すれば保険会社の解除権は消えます。
「2年我慢すれば・・・?」 これが「2年我慢すれば告知義務違反に問われず保険金がでる」との誤った理解を生み、一部のプロまでも誤解しています。
2年過ぎればバレにくくはなるでしょうが、ダメなものはダメです。保険会社の保険約款には重大事由による解除という定めがあり、期限の定めなく解除できます。また民法上の詐欺(サギ)での取消もあります。
また保険法57条は次のように定めています。
「保険金受取人が、当該生命保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたときは、生命保険契約を解除することができる。」保険法57条
告知義務違反の定めように5年とかの定めはなく、いつまでたっても適用されます。
日本生命の有配当終身保険(H11)普通保険約款(平成23年4月1日現在)
●重大な事由による解除
保険契約または付加している特約の保険金、年金もしくは給付金の請求に関し、保険金、年金または給付金の受取人の詐欺(未遂を含みます)があった場合は…解除することができます。
ある生命保険会社は営業職員が顧客に対し、ウソ告知や不告知をするようにとの、問題あるアドバイスをしていました。
営業職員がこのアドバイスで契約させます。しかし死亡時等には保険会社サイドが、詐欺だと言って保険金を払いませんでした。
営業職員と保険会社は立場が違います。営業職員は、無理もお客の為だと思うし、自分の成績のためにもと、こんなアドバイスをしてしまいます。
社会問題化しました。保険法改正により、保険営業員が告知を妨げたり(「黙っていたください」)、不実告知を勧めたり(「そこはこう言って下さい」)していた場合は保険会社は解除でなくなっています。つまり、このような場合には保険金は払われるようになっています。
さて告知は微妙です。たとえば花粉症や風邪で医師から薬を処方されていたら告知すべきか。
正しい答えは「花粉症も風邪も告知すべき」です。しかしネット通販商品などではちょっとの告知をするとそのまま契約不成立に直結することもあります。(なお花粉症や風邪等については「告知不要」と明記している保険会社もあります。)
住宅ローン借り換えに注意 注意すべきものに団体信用生命保険「ダンシン」があります。住宅ローンに付いてくる生命保険で、死亡時には住宅ローンをチャラにしてくれます。
銀行での住宅ローン申込時に付属書類のように簡単な「ダンシン」申込書を書かされます。
健康についての告知欄があります。銀行員は保険に興味ないからアドバイスもないでしょうし、本人だってローンを借りに来ているのであり保険に入るという自覚など全くありません。
健康状態の告知で「ダンシン」がダメになれば、住宅ローンもダメかもしれず、そうなればマイホームもダメ。しかし、ちゃんと告知をしないと死亡時に告知義務違反が問われ、住宅ローンが残ってしまいますよ。
特に、住宅ローンの借り換えは注意です。借り換えに際しては「ダンシン」は新契約になります。その際に告知が必要です。
例えば、中高年になって肝臓障害をかかえての住宅ローンの借り換えは「ダンシン」の告知をも考えないといけません。借り換え見送りの判断もあります。
告知内容は保険によって随分違う 保険の種類により、また商品により、健康状態の告知内容に大きな差があります。「どの保険がいいのか」ばかりでなく、「自分の健康状態ではどの保険に入れるのか」まで考えないといけない時代になっているようです。告知内容について比較しました。
●保険契約の告知項目は次のようになっています。
明治安田生命(ライフアカウント) 損保ジャパンひまわり生命(医療保険) オリックス生命(医療保険) アメリカンファミリー(入院保険) …の4点を見てみました。(数年前のものも含まれます)
この4点は大体同じような告知項目でした。 ざっくりと掲げれば次のような内容になります
- 3ケ月以内に医師の診察を受けたか
- 2年以内の健康診断人間ドックで異常はないか
- 5年以内に7日以上の治療はないか
- 障害はないか
<詳細>明治安田生命(ライフアカウント)- 最近3ケ月以内に医師の診療検査治療投薬を受けたことがあるか
- 2年以内に健康診断や人間ドックで異常(要再検査・要精密検査・要治療を含む)があるか。(「要経過観察」を異常に含むところと含まないところがあります。)
- 過去5年以内に病気やケガで、継続7日以上の入院をしたことがあるか、手術をうけたことがあるか、診察検査投薬治療をうけて完治まで7日以上になったことがあるか。(過去5年に継続していなくとも合計7日以上ならば告知を求める会社もあります)
- 身体に障害があるか(視力・聴力・言語・そしゃくの機能、手・足・指の欠損機能障害、背骨の変形障害)
- 女性の場合には婦人科系の告知が別途あります。
- 身長・体重(喫煙の有無・他の保険の契約状況・年収を告知内容に含むところもあります。)
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●県民共済の告知内容は次のように緩いものです。
- 現在に悪いところはないか
- 5年以内に慢性疾患の治療はないか
- 慢性疾患等の薬を常用していないか
- 1年以内に14日以上の入院か20回以上の通院
- 手術を受けて治って1年以内でないか
- 障害はないか
<詳細>- 現在、病気やケガの治療中である。または検査や治療が必要、もしくは検査中である。
- 慢性疾患のため、医師から治療をすすめられたり、慢性疾患が治ってから5年以内である。
- 慢性疾患や中毒のため薬を常用している。
- 過去1年以内に、病気やケガで連続14日以上の入院か、同じ病気やケガなどで20回以上の通院治療を受けたか、または心身に異常を
- 感じる症状があった。
- 手術を受け、治ってからまだ1年以内である。
- 身体に残る障害や先天性の病気により、日常生活において他人の手助けを必要とする状態である。
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●住宅ローンの団体信用生命保険
- 3ケ月以内に医師の診察を受けていないか
- 3年以内に14日以上の治療はないか
- 障害はないか
<詳細>明治安田生命- 過去3年以内に医師の治療(指示・指導を含みます。)・投薬を受けたことがありますか。
- 過去3年以内に下記の病気で、手術を受けたことまたは2週間以上にわたり医師の治療(指示・指導を含みます。)・投薬を受けたことがありますか。
- 狭心症、心筋こうそく、心臓弁膜症、先天性心臓病、心筋症、高血圧症、不整脈、その他心臓病
- 脳卒中(脳出血・脳こうそく・くも膜下出血)、脳動脈硬化症、その他脳の病気
- 精神病、うつ病、神経症、てんかん、自律神経失調症、アルコール依存症、薬物依存症、知的障害、認知症
- ぜんそく、慢性気管支炎、肺結核、肺気腫、気管支拡張症
- 胃かいよう、十二指腸かいよう、かいよう性大腸炎、すい臓炎、クローン病
- 肝炎、肝硬変、肝機能障害
- 腎炎、ネフローゼ、腎不全
- 緑内障、網膜の病気、角膜の病気
- ガン、肉腫、白血病、しゅよう、ポリープ
- 糖尿病、リウマチ、こうげん病、貧血症、紫斑病
- 子宮筋腫、子宮内膜症、乳腺症、卵巣のう腫
- 手・足の欠損または機能に障害がありますか。または、背骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害がありますか。
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<詳細>カーディフ生命- 最近3か月以内に、医師の診察・検査(検査結果が異常なしの場合を除きます)・治療・投薬・指示(要経過観察を含みます)・指導を受けたことがありますか。また、その結果、再検査・精密検査・治療・入院・手術をすすめられたことがありますか。(かぜや虫歯の場合を除きます)
- 過去3年以内に、病気やけがで、手術を受けたこと、継続して14日以上の入院をしたこと、または14日以上にわたって、医師の診察・検査(検査結果が異骨なしの場合を除きます)・治療・投薬・指示(要経過観察を含みます)・指導を受けたことがありますか。(かぜや虫歯の場合を除きます)<注:「14日以上にわたって」とは、初診日から最後の受療日までの期間のことをいい、その間に受療した回数は問いません。>
- 手・足・指について欠損または機能に障害がありますか。または背骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害や変形がありますか。
- 1日あたりの喫煙本数、ならびに1月あたりの飲酒回数をご記入ください。(0本ならびに0回の場合は「0」とご記入ください。)
<詳細>カーディフ生命【団体信用生命保険・ガン保障特約の場合の追加項目】- 生まれてから今までに「悪性新生物(ガン)」に罷患したことがありますか。
<注意事項>被保険者様が、特約の責任開始日前に「悪性新生物(ガン)」に罹患していた場合には、その事実をご契約者様または被保険者様が知っているといないとにかかわらず、団体信用生命保険特定疾病保障特約V型は無効となり、ガン診断給付金はお支払いできません。
- 過去1年以内に健康診断・人間ドックを受けて、臓器や検査の異常(要再検査・要精密検査・要治療を含みます)を指摘されたことがありますか。(「はい」の場合、右記該当箇所に最新の数値等詳細をご記入ください。)
- 過去3年以内に、下記の病気で、医師の診察・検査(検査結果が異常なしの場合を除きます)・治療・投薬・指示(要経過観察を含みます)・指導を受けたことがありますか。(各項目ごとにお答えください)
- ガン・しゅよう…ガン・肉腫・白血病・しゅよう・ポリープ・上皮内新生物(上皮内ガン)
- 胃腸・すい臓の病気…胃かいよう十二指腸かいよう・すい臓炎・かいよう性大腸炎・クローン病
- 肝臓・胆のうの病気…肝炎・肝硬変・肝機能障害・胆石・胆のう炎
- 女性の場合…子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣のう腫・乳腺症・絨毛性疾患(胞状奇胎など)
- 右記にかかげる病気…貧血・白板(斑)症一肺結核
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告知書の見本(アメリカンファミリー・EVER)
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告知義務についての参考ページ
●生命保険の告知義務と契約診査 共済加入時の告知は簡単? 保険診査で謝絶されたら他社では? 妊娠すると医療保険に入れない? 生命保険って誰でも入れるの? 病気を告知しなかったらどうなる? 過去の病歴と医療保険加入の関係 告知すれば保険金はもらえるの? 生保と損保での告知と保険金支払い
掲示板での告知についての質問と限界
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