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年金保険の二重課税の判決解説 坂本嘉輝 4/8
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死亡保険金を年金の形で支払う場合の二重課税の問題に関する最高裁判決について(4/8)
【相続により取得したとみなされるもの】 所得税法第9条第1項第15号で「相続により取得したものとみなされるもの」には所得税を課さない。すなわち「所得税非課税」だとしています。
そこでこの「相続により取得したものとみなされるもの」とはどこからどこまでのものなのかがポイントになります。
「相続により取得したものとみなされるもの」については相続税法第3条第1項第1号で、「被相続人の死亡により相続人が保険金を取得した場合について、その保険金」を「相続により取得したものとみなす」と規定しています。
ここでは「保険金」としか書いていないのですが、この「保険金」とは何かというのが最大の争点になります。 まず今回の裁判のテーマは「年金」ですが、相続税法第3条第1項第1号には「年金」とは全く書いてありません。でも「保険金」には「年金」も入るんだよねということでは双方とも合意しています。
でも「被相続人の死亡により取得した」という文言で「何を」取得したのかということになると、果たして年金を取得したんだろうか、保険金を取得したんだろうか、ちょっと不確かになります。厳密に言うと、年金の場合であれば被相続人(=被保険者)の死亡により相続人(=年金受取人)が取得したのは、年金受取人として第一生命に年金の支払の請求をすれば年金を払ってもらえるという権利(これを年金受給権といいます)だけであって、その年金の請求もしないのに年金が手元に入ってくるわけではありません。また年金も被相続人の死亡時にまるまる入ってくるわけではなく、毎年の年金の支払日(=被保険者の死亡の応当日)毎に、その年の分の年金が請求できるということでしかありません。
そこで「被相続人の死亡により取得した」のは、年金受給権だということになります。
この理屈で死亡保険金の場合を考えると、ここでも被相続人(=被保険者)の死亡により相続人(=死亡保険金受取人)が取得したのは、死亡保険金受取人として第一生命に保険金の請求をしたら払ってもらえるという権利(保険金受給権)だけであって、その請求もしないのに保険金が入ってくるわけではありません。 結局、相続税法第3条第1項第1号の「保険金」というのは「保険金受給権および年金受給権」ということになってしまいます。
保険金と書いてあるけれど、その意味は保険金でも年金でもなく、保険金受給権および年金受給権だと言うんですから、何ともあきれてしまいます。「保険金と書いてあるのは保険金のことじゃありません」てな具合なんですから。
【実際に受取るものは】 さてそうなると今度は、その受給権を元に保険金や年金を実際に受取った時にどうなるんだ(所得税が課税されるのか、非課税なのか)ということになります。Aさん側の主張は「相続により取得したとみなされる」というのは第一義的にはその年金受給権だけれど、その受給権とその受給権にもとづき受取る 年金は一体のものなので、これも「相続により取得したとみなされるもの」になり、結果、毎年受取る年金は所得税非課税になるはずだ」というものです。
これに対し国税側の主張は「相続により取得したとみなされる」のはあくまで年金受給権であって、それにもとづき毎年受取る年金それ自体は「相続により取得したとみなされるもの」ではない。従って所得税非課税ではなく、所得税法にもとづいて「雑所得」としてきちんと税金を払わなければならないものだ」というものです。 所得税の「相続により取得したとみなされるもの」の文言だけではどちらの主張にも理屈がありそうなので、ここから双方様々な切り口で自分の主張を正当化し、また相手の主張を否定しようと丁々発止を繰り広げるということになるわけです。
【死亡保険金は雑所得?】
まず最初にAさん側は 死亡年金が雑所得になるんなら、死亡保険金だって雑所得になるはずだろう。死亡保険金を雑所得にしないで所得税非課税にするんだったら、死亡年金も同じように雑所得にしないで、所得税非課税にするのが正しい。 と主張します。 これに対する国税側の答は見当たりません。多分 「死亡保険金が雑所得になるなんて、どこにも書いてないじゃないか」 というものでしょう。
【売掛金・貸付金・定期預金の例】
次にAさん側は 相続したのが売掛金・貸付金・定期預金等だったとしよう。相続した後でこの売掛金や貸付金・定期預金を現金で回収したとしても、その現金には所得税はかからないじゃないか。要は権利を現金化するだけだったら所得にはならないんだから非課税は当然じゃないか。 と言うんです。
これに対して国税側の反論は この売掛金・貸付金・定期預金の議論は年金とは関係ない というスゲないものです。
【相続の後で実現する所得】
一方国税側は 所得税の非課税の規定は「相続により取得したとみなされるもの」について非課税と言っているんで、相続の後で実現する所得についてまで非課税と言っているわけじゃない。 年金という所得は年金受給権が発生したとき(すなわち相続の時)に発生するのではなく、毎年の年金を受取る時に発生するんだから、この非課税の規定は適用されないんだ。だから所得税の規定により雑所得となるんだ。 と主張します。
【一体のもの・別のもの】 Aさん側は 年金受給権と年金は一体のものだから、別々にはできない。 と言うんですが、 国税側は 年金受給権と年金は全く別のものだ。相続税法の「保険金」はあくまで「年金受給権」のことで、年金は含まれない。 年金受給権は 相続税課税 所得税非課税 毎年の年金は 所得税課税(雑所得) と主張します。
Aさん側は 相続税の「保険金」を「年金受給権」と解釈して、これには年金が含まれないとするのは、どこにも根拠がないじゃないか。どこにそんなことが書いてあるんだ。 と反論します。
【国税不服審判所の裁決】 ここまでの議論を踏まえ、国税不服審判所は 相続の時に相続人が取得しているのは年金受給権だけで、年金を取得しているわけではない。従って所得税非課税になるのは、その年金受給権だけで、その後実際に受取る年金は非課税にはならず、雑所得となる。だから長崎税務署の再更正の計算(事実の経過の7.の計算)が正しい。 と、まずは国税側の勝ちです。 ここで国税側が負けるようじゃしようがないので、まぁ予定通りの成り行きです。 Aさん側はここでいよいよ長崎地方裁判所に行って裁判を始めることになります。
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