トピックス 2004年1月から3月

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生命保険■独断解説

トピックス 2004年1月から3月

9110    バードレポートトピックス版等から抜粋


銀行・証券・保険は一つの窓口に
全共連が不動産投資を増やすとどうなるか
日本経団連vs生命保険協会……トホホな民間生命保険会社
幼い子供が死んだら親に1000万円の死亡保険金

保険業法上の重要事項説明…文書交付だけでいい
保険料の引き下げで保険販売拡大
新聞記事から10年後を読み取る努力
外貨建て個人年金が続々と…消費者は愚かか?
消費者契約法…「消費者の利益を一方的に害する条項」は無効
「賃貸住宅の自然損耗は借主負担」は無効

JA共済が日本生命を凌駕する日

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銀行・証券・保険は一つの窓口に


金融庁は一つの窓口で様々な金融商品を提供できる「ワンストップサービス」の実現に向けて舵きりを始めています。

まず証券会社の委託を受けて株式の勧誘や注文の取次ぎをする「証券仲介業」を年内に銀行と保険に解禁します。そして銀行の窓口での生保損保の販売について、現在は認めていない死亡保障やがん保険なども含めて全面解禁を検討しています。

竹中大臣は「消費者はワンストップサービスを求めている。消費者本位の中で実現しなくてはならない」と表明。保険業界も証券業界も一部では大打撃でしょうが、消費者本位のための垣根撤廃です。大切なのは業界ではなく消費者ですから。
(日本経済新聞2004.1.5.)




全共連が不動産投資を増やすとどうなるか


全国共済農業協同組合連合会(全共連)の2003年3月末の資産運用総額は40兆円。うち不動産は0.4%の1600億円に過ぎません。その全共連が30階建てのオフィスビルを372億円で購入しました。

全共連はJA(農業協同組合)の共済を受け持っています。今後不動産による運用の比率を高めることは考えていないとのことです。それでも敢えて計算すると、比率を1%引き上げるだけで4000億円が不動産マーケットに流入します。
(日経不動産マーケット情報2004.2月号)




日本経団連vs生命保険協会……トホホな民間生命保険会社
幼い子供が死んだら親に1000万円の死亡保険金


賃下げするから保険を見直せ?

日本経団連の奥田碩会長が「生命保険などの保険料支払いが家計支出を制約しており、各家計で見直しが必要」と発言しています。

奥田氏は賃金抑制を強調する一方で、消費支出の見直しも必要と指摘して、生保などの保険料の支払いが、住宅ローンや教育費と同様に「家計の自由度を制約している」とし、「家計が保険に対する正確な知識を持つことで、過大な保障や重複した保障を見直すことがかなりの程度可能」ということです。

これに対して生命保険協会会長は「生保の保障が過大というのはあたらない」と反論しています。所得が減った家計による保険契約の見直しは、まさに生保の「泣きどころ」です。
(朝日新聞2004.1.16.)

奥田氏は自動車メーカーのトヨタ出身です。「車は走る凶器、環境汚染の元凶」と言われたらどうするか…だとか。かなり感情的になっていますね。
(保険情報2004.1.30号)

企業側として賃金引き下げをしたいので、労働者は保険を減らすべき、というトホホな発想や発言はどうかとも思います。しかし、過大な保険料を支払い続けている家庭が多いことも真実です。


幼い子供が死んだら親に保険金

奥田会長に対して反論したのは第一生命の社長です。この第一生命では昨年「未来きっぷ」という名前の保険を新発売しました。

この「未来キップ」は幼い子への最大1000万円もの死亡保障を乗せた商品です。「親が死んだら」でなく「子が死んだら」保険金を親が受け取るのです。子への医療保障や学資確保のための学資保険はそれなりに理解できます。しかし子が死んだときの死亡保障なのです。(子の医療保障も付加されていますし、それが「売り」ですが。)

保険種類の少なかった昭和30年代40年代ならともかくも、2003年7月の段階でなぜこのような保険をなぜ発売するのでしょうか。そこまでして死亡保障の大きな保険を売りたいのでしょうか。子にとって家庭にとって何が大切かを考えて保険商品の開発をしているのでしょうか。

本当に顧客のことを考えたなら、この商品を本当に提案できるのでしょうか。保険商品研究をしていて、最近ではもっとも情けない思いをした保険商品です。

我が子に1000万円もの死亡保障をかけてしまった保険証券もネット上で公開しています。

「未来きっぷ」第一生命

「家族」や「子」を愛しているのなら、たとえ保険会社の営業員さんとのお付き合いで契約せざるをえないにしても、「子が死ねば保険金がでる保険」ではなく、たとえわずかであっても「親が死んだときの保険金がでる保険」にしてください。お勧めする側もそのような保険をお勧めしてください。

こんな商品を今頃新発売しているようでは日本経団連の奥田会長の「家計が保険に対する正確な知識を持つことで、過大な保障や重複した保障を見直すことがかなりの程度可能」という主張に対して反論できないはずです。


こども保険学資保険 20商品比較

こども向け医療保険 9商品比較


保険業法上の重要事項説明…文書交付だけでいい


弁護士さんから保険会社のコンプライアンスについてレクチャーをうけました。

保険業法300条1項1号では「保険料・支払方法・担保範囲・面積・期間・保険金額・返戻金」等の事項について、契約者に重要事項説明をすべきと定めています。

保険業法上ではこの重要事項説明について「面談する必要も、口頭で説明する必要もなく、文書の交付だけしてあれば」、金融庁に報告するべき不祥事にはならないというのです。不動産業界での重要事項説明は厳しいものです。不動産業の視点から見ると、まさに驚きです。

確かに通信販売商品などを考えればその通り運用されているのでしょう。でも何十年にもわたって何百万円もの保険料を払い込む生命保険商品であっても、面談せずとも口頭で説明せずともかまわないという法律になっているようです。

もちろん現場の各保険会社は「口をすっぱくして」面談して口頭で説明せよと指導しているのでしょうが…。


保険料の引き下げで保険販売拡大


アイエヌジー生命は2月2日から、定期保険の保険料を引き下げで販売の拡大を図ります。

30歳男性期間10年で保険金額3000万円口座振替扱いの定期保険は月額6060円でしたが5340円へと11.9パーセントの値下げです。やる気になれば保険会社でも値下げもできるのですね。

(保険毎日新聞2004.2.2.号)


新聞記事から10年後を読み取る努力


「108年の歴史を持つ鐘紡が過去25年に上げた税引き後利益は約270億円。年平均わずか11億円弱だ。同じ期間に同社は、主に土地売却益とみられる総額約2000億円の資産売却益を計上している。税引き後利益の約7倍に上る含み益の吐き出しが、四半世紀の間、名門企業を支えてきたのだ。」

1887年創業した鐘淵紡績。1970年に「ファション元年宣言」、1971年に鐘紡に社名変更し「紡績」から脱皮して多角化を進めました。1977年の出来事には「ハウジング・ツーバイフォー工法を採用」とありますから住宅不動産業にも進出したのでしょう。そして2001年にカネボウに社名変更します。

(カネボウのホームページより)

引用の記事は最近の記事ではありません。1995年6月13日の日本経済新聞の特集記事「土地本位制経済の終焉」からの引用です。この1995年での過去25年というと1970年ごろからです。つまり鐘紡の多角化は土地資産の食い潰しだったのでしょう。

そしてこの新聞記事から9年を経て、ついにすべてを食い尽くして、カネボウは産業再生機構の支援により再生を目指します。(日経新聞2004.2.17.)

この1995年の日経新聞の特集記事は鐘紡の他に、そごうと日産の事例を取り上げていて、最後に「土地本位制経営に決別して、フローの収益力を高めなければならない時代が足早にやってきている。」と記しています。9年前に新聞記者が予感したことが、すべて実現しました。そごうは破綻し、日産は外資に買われて生き延び、そしてカネボウです。

私たちは現在の新聞記事から5年後10年後を読み取る努力をしなくてはいけません。

外貨建て個人年金が続々と…消費者は愚かか?



外貨建て個人年金の発売が続いています。旧GEエジソン生命が98年に発売した「えんドル君」から始まり、アリコジャパンが続きました。今年になってからAIGスター生命、東京海上日動あんしん生命がそれぞれ外貨建て年金の発売を開始しています。

変額年金の銀行窓販が進み、個人年金市場は急拡大中です。手ごろなリスクの外貨建て資産をも保有したいというニーズを取り込みます。

これら外貨建て商品は一時払いが基本ですが月払いも一部で採用され、また死亡時の保険金については円建てでの最低保証のある商品も登場しています。

(保険情報2004.3.5.)

「これまで生保は『消費者は生命保険の必要性を自覚しておらず、営業職員による説得が不可欠』と主張してきた。しかし、消費者はそんなに愚かなのだろうか。」とは日経金融2004.2.26での特集記事「10年後の保険」での記者による問いかけです。

日本の消費者は成熟しました。外貨建て商品さえも自らの判断で自由な商品選択の対象にしています。

この日経金融は「一般の商品では当たり前の消費者主導の波が、今後10年で保険業界にも押し寄せる可能性がある」とこの特集記事をしめています。

しかし一部生保の経営者は依然「消費者は愚か」と思っているようです。月刊現代3月号に「全面勝利・生保が詐欺的契約の非を認めた」という保険契約の下取りについての実録記事があります。これを読むとそう感じざるを得ません。残念なことです。

「騙された!!」のなら生命保険の転換は取り消し…トホホな民間生命保険会社2
でこの記事の例を取り上げています


消費者契約法…「消費者の利益を一方的に害する条項」は無効
「賃貸住宅の自然損耗は借主負担」は無効


アパート退去時での通常の使用による損耗(自然損耗)の修繕費は貸主負担が原則です。しかし貸主借主間の賃貸借契約での特約により借主負担にすることは法的には有効でした。さて京都のあるオーナーは20万円分の敷金についてこの借主負担の特約により賃借人への返還を拒否しました。

賃借人は特約そのものについて、消費者契約法に基づき「消費者の利益を一方的に害する条項」だから無効である、としてオーナーに敷金の返還を求めました。京都地裁の判決は賃借人の主張をそっくり認め特約を「無効」と認めました。

(朝日新聞2004.3.17.)

消費者契約法は2001年4月施行の法律です。この問題となった賃貸借契約は98年7月入居で02年8月退去となっており、消費者契約法施行前の賃貸借契約について消費者契約法を適用しているようです。

消費者契約法施行…説明に問題あれば契約取り消し

bird発行人は保険商品の約款など読むときは、この考え方を頭に置いてから読むようにしています。そして保険業界では保険会社の「内規」なるものを「当然の法律」のように考える傾向があります。そして様々な条件を「内規」なるもので定めています。

ある保険会社の約款には「保険契約者は、将来に向かって付加している特約を解約し、解約返戻金がある特約については、その特約の解約返戻金を請求することができます。ただし、特約を解約した後の主契約の保険金額が会社の定める限度を下回る場合は、主契約とともに解約することを要します。」

保険契約時に「会社の定める」を明示されていなければこの「内規」は契約者に対してすべての場合で効力があるとはいえないと思います。

ちなみにbird発行人は税理士としての税務申告業務を行うことがあります。国税庁の様々な扱いを「通達」とか「事務連絡」として定めており税務署側は従わなければなりません。それは「法律」ではないものの税務署の「内規」のようなものです。

しかし納税者は「通達」に拘束される義務はありません。「通達」がおかしいとあるいは適切でないと思えば税理士は堂々と「通達」を無視した税務申告を行います。そして「国税不服審判所」で国と争います。それは当然の権利です。

保険会社の方々は「内規」を法律のようにお考えのようです。そんな考え方はやめましょう。


JA共済が日本生命を凌駕する日


日本生命は規模において簡易保険にはかないませんが、民間での生命保険業界の雄です。

さて日本生命とJA共済との比較です。個人保険保有契約高は271兆円に対し225兆円。両者ともここ数年は数字を減らし、減り方は日本生命が急です。このまま減るとあと10年で逆転しそうです。

日本生命(他の大手民間生保も同様)は10年ごとに保障を見直す更新型が主力で、契約は10年ごとの見直しとなり、その度に保有契約高は減ります。一方でJA共済では更新型の販売はほんのわずか。

「いたずらに『新契約競争や新商品競争』に走らず、地域密着型の契約者が安心できる保険商品に的を絞ったJA共済の生保販売戦略が、ここにきて効を奏してきたと言える」そうです。

(週刊エコノミスト2004.3.30.大地一成氏)







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