公的介護保険とは、40歳以上の人を対象とした強制保険です。
保険料を納め、介護が必要になったときに、保険給付を受けて介護サービスを購入する社会保険制度です。
日本でスタートしたのは2000年4月からですが、当初から施行5年での見直しが定められており、2005年6月に改正介護保険法が成立しました。
多くは2006年春からの施行ですが、一部の措置は2005年10月に先行して実施されています。
改正の大きなポイントは「介護予防」が全面的に打ち出されたことです。
「元気で長生き」という自立の発想が、介護予防の基本にあります。
高齢者が必要以上に介護に頼らないで済む状態をつくるための考え方で、新制度では、要介護度が比較的軽い人に向けて、「介護予防サービス」を創設します。
なおこれから解説します介護認定区分については、「要支援」と「要介護1〜5」の6段階ですが、改正により「要支援1〜2」と「要介護1〜5」の7段階になります。
介護予防サービスを受けられるのはこの「要支援1〜2」の人です。
改正後は、現在の「要支援」の人はそのまま「要支援1」に移り、現在の「要介護1」のうち認知症の人などを除いた人が「要支援2」に移行します。
保険者は各市町村であり、被保険者は65歳以上の方(第1号被保険者)、40〜64歳の方(第2号被保険者)です。
第1号被保険者:65歳以上の方の保険料の目安
保険料は市町村ごとに基準額を設定し、所得に応じた6段階の保険料が決められます(市町村によっては倍率を変えたり、7段階以上にしているところもあります)。そのため各地で差があります。また、保険料は3年ごとに改定されます。
区 分 |
対象者 |
負担割合 |
基準額[4,100円]と
仮定した場合の保険料 |
第1段階 |
生活保護・老齢福祉年金受給者の方 |
基準額×0.5 |
2,050円 |
第2段階 |
世帯全員が市町村民税非課税で、本人の年金収入が80万円以下で年金以外に収入がない人。 |
基準額×0.5 |
2,050円 |
第3段階 |
世帯全員が市町村民税非課税で、第2段階に該当しない人。 |
基準額×0.75 |
3,075円 |
第4段階 |
本人が市町村民税課税。 |
基準額 |
4,100円 |
第5段階 |
本人が市町村民税課税で、
合計所得金額200万円未満。 |
基準額×1.25 |
5,125円 |
第6段階 |
本人が市町村民税課税で、
合計所得金額200万円以上。 |
基準額×1.5 |
6,150円 |
納付の方法は、公的年金からの年金額が年間18万円以上の場合は年金から天引きされます。
それ以外の人は、市町村からの納付通知書により、個別に納付します。
第2号被保険者:40〜64歳の方の保険料の目安
区 分 |
算定方法 |
負 担 |
平均的保険料
(本人負担額月額)
2005年度推計値 |
健康保険組合 |
標準報酬額×
保険料率 |
事業主が半額負担 |
約2,000円 |
国民健康保険 |
各市町村で決定 |
国が半額負担 |
約1,300円 |
保険料については、各医療保険料に上乗せして一括して納付するため、別途納付する必要は
原則としてありません。
では、介護認定とはどのような流れで行われるのでしょう。
市町村の窓口や福祉事務所に介護保険の申請を行うと、申請者の心身の機能や状態について調査が行われ、介護を必要とする度合いに応じて、「要支援1〜2」と「要介護1〜5」の7段階に認定されます。
要介護度の認定によって、介護サービスや施設へ支払われる保険の限度額が決まります。
なお、40歳〜64歳の人は、特定の病気で要介護状態になった場合に限り、介護サービスを受けられます。
65歳以上の第1号被保険者は、要介護状態になった原因が何であろうと、公的介護保険のサービスを利用することができますが、40歳〜64歳の第2号被保険者は、老化に起因する特定の病気によって要介護状態になった場合に限り、介護サービスを受けられます。
したがって、それ以外の原因で要介護状態になった場合は、公的介護保険のサービスを受けられません。
40歳〜64歳でも介護サービスが利用できる特定疾病
(1) |
初老期認知症:アルツハイマー病、脳血管性認知症、神経変性疾患(ピック病、パーキンソン病末期等)、感染症によるもの(クロイツフェルト・ヤコブ病、AIDS等) |
(2) |
脳血管疾患:脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、硬膜下血腫等 |
(3) |
筋萎縮性側索硬化症(ALS) |
(4) |
パーキンソン病関連疾患 |
(5) |
脊髄小脳変性症 |
(6) |
多系統萎縮症 |
(7) |
糖尿病性疾患:糖尿病性の腎症、網膜症及び神経障害 |
(8) |
閉塞性動脈硬化症 |
(9) |
慢性閉塞性肺疾患:肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎 |
(10) |
変形性関節症:両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴うもの |
(11) |
関節リウマチ |
(12) |
後縦靭帯骨化症 |
(13) |
脊柱管狭窄症 |
(14) |
骨折を伴う骨粗しょう症 |
(15) |
早老症(ウェルナー症候群) |
(16) |
末期がん⇒2006年4月から追加 |
介護サービスにはどんな種類があるのでしょうか?
- 自宅で生活しながら受けるサービス
- 施設などを利用して受けるサービス
- 介護の環境を整えるためのサービス
- 施設に入所して受けるサービス
1、2、3は在宅サービスで、公的介護保険では4人中3人程度が利用している
中心的なサービスです。4は要支援1〜2の人は利用することができません。
公的介護保険で受けられる在宅サービス
介護保険で要支援・要介護の方が受けることができるサービスの具体的な内容は以下のとおりです。
自宅で受けるサービス
- 訪問介護:ホームヘルパーの訪問
- 訪問看護:看護婦などの訪問
- 訪問リハビリテーション:リハビリの専門職の訪問
- 訪問入浴介護:入浴チームの訪問
- 居宅療養管理指導:医師・歯科医・薬剤師・栄養士・歯科衛生士による指導
施設などを利用して受けるサービス
- デイサービス:日帰り介護施設への通所
- 通所リハビリテーション(デイケア):老人福祉施設などへの通所
- 短期入所生活介護(福祉施設でのショートステイ):特別養護老人ホームや
老人福祉施設などへの短期入所
- 短期入所療養介護(医療施設でのショートステイ)
- 認知症対応型共同生活介護 :認知症高齢者グループホーム
- 特定施設入所者生活介護:有料老人ホームなどでの介護
介護環境を整えるサービス
- 福祉用具の貸与:車いす・特殊寝台などの貸与
- 福祉用具の購入費支給:腰掛け便座・入浴用いすなど
- 住宅改装費の支給:手すりの取付け、段差の解消など
- ケアマネージャーによるケアプランの作成
介護保険で受けられる施設サービス
施設サービスとは、次の3箇所に入所して受けるサービスのことです。
※要支援1〜2の人は、施設サービスを受けることはできません。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
施設サービスの自己負担
施設サービス |
平均利用総額 |
内、一部負担金 |
特別養護老人ホーム |
325,000円 |
平均 |
50,000円 |
一部負担金 |
27,000円 |
食費 |
23,000円 |
|
老人保健施設 |
354,000円 |
平均 |
53,000円 |
一部負担金 |
30,000円 |
食費 |
23,000円 |
|
療養型病床群 |
431,000円 |
平均 |
60,000円 |
一部負担金 |
37,000円 |
食費 |
23,000円 |
|
高額介護サービス費制度
サービス利用料の1割を自己負担する介護保険制度では、その負担によって利用者自身が介護サービスを抑制したり、利用料を払えない人をサービス提供者が拒否するなどの問題が予想され、自己負担額が下表の高額サービス費を超えた場合、超えた分を払い戻す制度がつくられています。
ただし、超えた分を後で請求して払い戻しを受ける償還払い方式となっています。
対象者 |
高額サービス費 |
一 般 |
37,200円 |
住民税非課税世帯 |
24,600円 |
生活保護 |
15,000円 |
老齢者福祉年金受給者 |
15,000円 |
特別養護老人ホーム入所者に対する特別措置案
現在、特別養護老人ホームに入所されている方では、介護保険制度の施行によって自己負担が現行より増加するという矛盾があります。
厚生労働省ではこの矛盾に対応するため、特別養護老人ホームに現在入所されている方に限り、特例措置を発表しています。
利用者の収入に応じて減免措置が講じられます。
ただし、5年間の時限措置とされています。
年 収 |
介護費用負担割合 |
食費負担 |
自己負担額 |
23万円以下 |
0% |
0 |
0 |
24万円以下 |
0% |
8,300円 |
8,300円 |
24万超〜34万円 |
0% |
9,000円 |
9,000円 |
34万超〜40万円 |
3% |
9,000円 |
17,500円 |
40万超〜48万円 |
3% |
15,000円 |
23,250円 |
48万超〜68万円 |
5% |
15,000円 |
28,750円 |
68万超〜266.6万円未満 |
10% |
15,000円 |
39,600円 |
266.6万円以上 |
10% |
22,800円 |
50,300円 |
介護サービスの内容とおおよその費用
項 目 |
内 容 |
ホームヘルプ
(訪問介護) |
ホームヘルパーさんに自宅に来てもらい、日常生活の介助や日常生活の援助を受けられます。
・家事援助 |
・・・ |
2,220円/1時間未満 |
・身体介護 |
・・・ |
4,020円/1時間未満 |
・家事援助と身体介護 |
・・・ |
2,780円/1時間未満 |
|
ホームヘルプ巡回型 |
通常のホームヘルプは、ヘルパーさんが2〜3時間自宅に滞在して、生活介助や家事援助を行いますが、巡回型は、時間帯にあわせ30分程度来てくれて、おむつ替えなどのスポット型のサービスをしてくれます。
・2,100円/30分未満 |
訪問介護 |
医師の指示によって、看護師さんや保健師さんが自宅に来て、療養の世話や治療の補助をしてくれます。
・医療機関 |
・・・ |
5,500円/1時間未満 |
・看護ステーション |
・・・ |
8,300円/1時間未満 |
|
訪問リハビリテーション |
病状が安定してから、理学療法士や作業療法士が自宅に来て、リハビリテーションが受けられます。
・5,500円/1日 |
訪問入浴介護サービス |
自宅で入浴の介護をしてもらえます。
・12,500円/1回 |
デイサービス
(通所介護) |
デイサービスセンターに行って、生活指導・日常生活訓練・食事・入浴・機能訓練などのサービスを日帰りで受けられます。送迎もしてもらえます。
・要介護度1・2・・・4,730円/4時間以上6時間未満 |
デイケア
(通所リハビリテーション) |
老人保健施設や病院、診療所に行って、食事・入浴・機能訓練などが受けられます。送迎もしてもらえます。
・要介護度1・2・・・5,420円/4時間以上6時間未満 |
ショートステイ
(短期入所) |
特別養護老人ホームや老人保健施設などに短期間入所して、日常生活の介助や看護が受けられます。
・要支援 |
・・・ |
9,140円 |
・介護度 1 |
・・・ |
9,420円 |
・介護度 2 |
・・・ |
9,870円 |
・介護度 3 |
・・・ |
10,310円 |
・介護度 4 |
・・・ |
10,760円 |
・介護度 5 |
・・・ |
11,200円 |
|
介護サービス計画作成
(ケアプラン) |
在宅介護支援センターなどに所属するケアマネージャーと相談しながら、自分にあった介護サービス計画を立て、計画書を作成してもらいます。
・要支援 |
・・・ |
6,500円/1ヶ月 |
・介護度 1・2 |
・・・ |
7,200円/1ヶ月 |
・介護度 3・4・5 |
・・・ |
8,400円/1ヶ月 |
|
※概算費用は、厚生労働省の試算による参考値ですのでケアプランの作成では、サービス提供業者の示す料金を必ず確認してください。
2005.10.30記事 2007.7更新 |