生命保険の税法上の特典の一つとして、保険料を支払ったときの「生命保険料控除」があります。
生命保険の契約をすると、契約者は生命保険料を保険会社に払い込むことになります。
保険料の支払い方法には、月払い、半年払い、年払い、ボーナス払い、一時払い、前納、などがありますが、どのような支払い方法をとっていても、支払う保険料に対して税金は一切かかりません。
もちろん、消費税もかかりません。
税金がかかるのではなく、税金が戻ってくる制度が生命保険料控除です。
その支払保険料に応じて、一定の額がその年の契約者の所得から控除されます。
その分だけ課税対象額が少なくなり、所得税と住民税が軽減されます。
生命保険料控除には、一般の生命保険料控除と個人年金保険料にかかる控除の2種類があります。
生命保険料控除は、民間の生命保険契約のほか、日本郵政公社の簡易保険・年金保険や農協(JA)の生命共済・年金共済などの保険料や掛金にも適用されます。
実際に生命保険料控除の対象となる契約はどんな条件でしょうか?
一般の生命保険料控除が受けられる保険の範囲
対象となるのは、保険金受取人が、本人もしくは配偶者、またはその他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)である生命保険の保険料です。
親族であれば生計を一にしていなくても、生命保険料控除を受けられます。
「財形保険」および保険期間が5年未満の「貯蓄保険」は、控除の対象から除かれます。
個人年金保険料控除が受けられる保険の範囲
対象となるのは、「個人年金保険料税制適格特約」を付加した個人年金保険の保険料です。
この特約を付加するためには、
- 年金受取人が契約者または配偶者のいずれかであること。
- 年金受取人は被保険者と同一人であること。
- 保険料払込期間が10年以上の契約形態であること(一時払いは不可)
- 年金の種類が確定年金・有期年金であるときは、年金開始日における
被保険者の年齢が60歳以上で、かつ年金受取期間が10年以上であること。
などの条件をすべて満たす必要があります。
個人年金保険で、「個人年金保険料税制適格特約」を付加していない場合や、変額個人年金保険は、一般の生命保険料控除の対象となります。
また、疾病入院特約などを付加している場合、特約部分の保険料については、個人年金保険料控除の対象とはならず、一般の生命保険料控除の対象となります。
生命保険料控除が認められる保険料
その年の1月1日から12月31日までに払い込んだ保険料で、その年中に支払いを受けた配当金がある場合は、保険料の合計額から当該配当金を差し引いた保険料をいいます。
ただし、「個人年金保険料税制適格特約」を付加した個人年金保険の保険料は、配当金の途中引き出しができませんので、払込保険料がそのまま証明額となります。
その他のケース
その他のケースは以下の通りです。
- 約款上配当金で保険金を買い増しする場合や、配当金の支払方法が
積立(措置)で途中引き出しができない場合は、払い込んだ保険料が
そのまま控除の対象となります。
- 一時払い保険料は、保険料を支払った年に1回だけ控除の対象となります。
- 前納保険料は、保険料に所定の割引率を乗じて計算した金額のうち、
その年に見合う額が控除の対象となり、年々順次控除されていきます。
- (自動)振替貸付の保険料も、正常の保険料の払込がされている場合と同様に、
控除の対象となります。
- 未払込保険料を支払って契約を復活した場合は、支払いが実際に行われた年に
まとめて控除の対象となります。
控除される金額の算出方法を確認していきましょう。
所得税と住民税では控除の額が異なりますが、次のそれぞれの表によって計算された額がその年の所得から控除されます。
年間払込保険料と控除される額
■所得税の生命保険料控除額(所得税法第76条)
区分 |
年間払込保険料 |
控除される額 |
一般の生命保険料の場合
(個人年金保険の場合も同じ) |
25,000円以下の場合 |
払込保険料全額 |
25,000円を超え
50,000円以下の場合 |
(年間払込保険料×1/2)
+12,500円 |
50,000円を超え
100,000円以下の場合 |
(年間払込保険料×1/4)
+25,000円 |
100,000円 を超える場合 |
一律50,000円 |
■住民税の生命保険料控除(地方税法第34条)
区分 |
年間払込保険料 |
控除される額 |
一般の生命保険料の場合
(個人年金保険の場合も同じ) |
15,000円以下の場合 |
払込保険料全額 |
15,000円を超え
40,000円以下の場合 |
(年間払込保険料×1/2)
+7,500円 |
40,000円を超え
70,000円以下の場合 |
(年間払込保険料×1/4)
+17,500円 |
70,000円 を超える場合 |
一律35,000円 |
※所得税で所定の手続きをしていれば、住民税の手続きを特に行う必要はありません。
実際、個人年金保険料(年間)10万円支払ったときの節税額はいくらぐらいになるでしょうか?
所得税で個人年金保険料控除額50,000円、住民税で35,000円の場合
家族構成 |
給与
収入 |
未加入の場合 |
加入の場合 |
節税額
(<1>+<2>)
−(<3>+<4>) |
所得税の課税所得 |
<1>
所得税 |
<2>
住民税 |
所得税の課税所得 |
<3>
所得税 |
<4>
住民税 |
独身者 |
300万円 |
133万円 |
133千円 |
73千円 |
128万円 |
128千円 |
71.2千円 |
6,800円 |
500万円 |
273万円 |
273千円 |
182千円 |
268万円 |
268千円 |
178.5千円 |
8,500円 |
夫婦 |
500万円 |
197万円 |
197千円 |
116千円 |
192万円 |
192千円 |
112.5千円 |
8,500円 |
700万円 |
357万円 |
384千円 |
276千円 |
352万円 |
374千円 |
272.5千円 |
13,500円 |
夫婦と
子供1人 |
700万円 |
319万円 |
319千円 |
243千円 |
314万円 |
314千円 |
239.5千円 |
8,500円 |
1,000万円 |
583万円 |
836千円 |
507千円 |
578万円 |
826千円 |
503.5千円 |
13,500円 |
夫婦と
子供2人 |
700万円 |
281万円 |
281千円 |
210千円 |
276万円 |
276千円 |
206.5千円 |
8,500円 |
1,000万円 |
545万円 |
760千円 |
474千円 |
540万円 |
750千円 |
470.5千円 |
13,500円 |
注:課税所得は平成13年度の控除額で、給与所得・基礎控除・配偶者控除・配偶者特別控除・社会保険料控除・扶養控除(子供がいる場合)・生命保険料控除(加入の場合)の各控除を考慮。妻は専業主婦、特定扶養親族の割増は考慮せず。低率減税は考慮せず。
控除対象の契約形態に加入しても、自己申告をしないと、控除が受けられません。生命保険料控除を受けるための手続きを覚えてしまいましょう。
生命保険料控除の手続き
サラリ−マンの場合
生命保険会社の発行する「生命保険料控除証明書」を「給与所得者の保険料控除等申告書」に添付し、勤務先に提出して年末調整で控除を受けます(給与天引きにより保険料を払い込んでいる場合は不要です)。
注)年収が2,000万円以上など一定の条件を満たす場合は、確定申告となります。
自営業者の場合
翌年2月16日から3月15日までの所得税の確定申告において、「生命保険料控除証明書」を確定申告に添付して控除を受けます。
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保険料を払い込むことによって、所得控除が受けられるケースがあります。一般の生命保険料控除を使い切ってしまった場合は、個人年金保険料控除の枠を使うことも可能です。税法上の特典をうまく使えるような契約形態を心がけ、忘れずに申告をしましょう。
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2005.1.16記事 2007.7更新 |