生命保険の販売はほとんどの保険会社が女性による販売でした。その多くは主婦であり生保レディと呼ばれる販売形態でした。日本生命も第一生命も住友生命も明治生命も朝日生命も三井生命も…。
その生命保険業界に男性営業マン主体の生命保険会社が参入しました。1970年代以降に参入した昭和50年代以降にプルデンシャル生命保険やソニー生命保険でした。大手企業の男子大卒サラリーマンを中心に個別に営業マン、ライフプランーとしてスカウトして採用し、それまでの生保レディとは違うコンサルティングセールスによる保険営業を始めました。
ただし生保レディによる従来型の保険販売の生命保険会社も、男子大卒ライフプランーによるコンサルティングセールスの生命保険会社も「一社専属型」と呼ばれるの保険会社です。生保レディもライフプランナーも特定の保険会社、つまり一社に所属し専属しているからです。例外はあってもその専属している生命保険会社の生命保険商品しか販売できないのです。日本生命の保険レディは日本生命の商品しか販売できず、ソニー生命のライフプランナーは住友生命の保険商品を販売できません。
金融自由化の流れが生命保険業界に押し寄せました。1996年に保険業法が改正されます。まず生保損保の相互乗り入れです。生命保険会社は子会社方式で損害保険業界に参入し、損害保険業界も子会社方式で生命保険業界に参入しました。損害保険系の生命保険会社、例えば「(現)東京海上日動あんしん生命」などの生命保険会社が続々生まれます。
そして「乗合代理店」が生まれます。一つの保険代理店が複数の生命保険会社の保険代理店となることが認められ、その複数保険会社の生命保険商品の販売をすることが可能となったのです。それまでは保険代理店も「一社専属型」だったのです。それが幾つもの生命保険会社に乗りあう「乗合代理店」が可能となったのです。現在では何十もの保険会社に乗り合う保険代理店も多くなりました。
これにより保険の比較販売が可能になりました。例えばその保険代理店がソニー生命とアフラックとアリコ生命の三社の保険代理店として登録していれば、その三社の生命保険商品を比較して、顧客に向いた商品を選ぶことが一つの保険代理店の中で可能になったのです。そしてインターネット時代を迎えます。消費者は賢くなり比較購買が当然になり、「乗合代理店」が力を発揮することになります。
また「保険ショップ」が消費者の身近に感じられるようになります。2000年頃から各地のスーパーマーケット、ショッピングセンターそして、地域の商店街、またビジネス街のオフィスビルにも進出して当たり前に見かける店舗となっています。ほとんどの保険シッョブは生命保険会社の保険代理店であり「乗合代理店」です。全国で数百点の保険ショップの店舗を運営する会社もあらわれました。
保険ショップが新しい生命保険の販売形態を作りました。それまでは生命保険は生保レディや営業マンが店舗などに来店することはありませんでした。しかし保険シッョブでは顧客が「来店」して保険相談を受け付けます。そのために保険ショップのことを保険業界では特に「来店型保険ショップ」と呼びます。これまで「来店」などあり得なかったのでわざわざ「来店型」と名づけられたのでしょう。
保険ショップでも生命保険会社が運営する店舗(日本生命によるニッセイライフプラザ、そして第一生命の第一生命ほけんショップなど)もありますが、ほとんどの保険シッョブは保険会社の乗合代理店でもあります。乗合代理店なので一社だけの生命保険商品だけではなく、複数保険会社の生命保険の比較が可能なのです。また生命保険会社でも住友生命などは子会社である乗合代理店が保険ショップを展開しています。
この保険ショップが広がったことで、一般消費者の考え方も変わったようです。「どの保険会社でも生命保険は同じと思っていたが違うようだ。」「生命保険に入るには現状を相談し、様々な生命保険を比較するもの。」と思われるようになったのです。
金融自由化によるこういった生命保険の販売自由化を生みました。そして
同時期に進展したIT技術の進化があります。ITにより複雑な生命保険と生命保険の保険料設定が可能になったのです。多様な生命保険商品が誕生し、生命保険料の値下げの競争が始まりました。「生命保険の保険料は保険会社で違い、高いものも安いものもある」「更新型保険は注意しないといけないが、保険転換見直しはもっと注意しないといけない。騙されることすらある」との声も聞くようになり、生命保険の相談や比較購買のために保険ショップが人気となっていきます。
IT技術が進化しました。そしてインターネットが自由に使える時代になったのです。ネットを活用する生命保険会社も生まれます。店舗や営業員が不要ですから保険料をグッと安くすることができます。そうして保険料が劇的に安くなりました。また金融自由化で様々な形態の保険商品が生まれました。ミニ保険会社ともよばれるようになった少額短期保険業者が出現しユニークな保険商品の販売を始めています。もちろんインターネットをつかって生命保険の比較が行われるようになったのも当然です。
インターネットにより、人による生命保険の営業販売も変わりつつあります。知り合いの保険屋さんに頼むとしがらみがあり面倒と思う人も多くなり、ネット上から生命保険の無料相談を引き受けるファイナンシャルプランナーも多くなり、そのためのサービスサイトも生まれています。そのサイトがファイナンシャルプランナーを希望者に紹介し、希望者の勤務先や自宅、そして希望する喫茶店などに訪問するようにセッティングされます。
インターネットが生命保険の入り方をガラリと買えました。まずはインターネット生命保険会社による劇安な生命保険と、それらも巻き込んだネットによる生命保険の通信販売です。
そして保険ショップ等の乗合保険代理店による相談型の生命保険の販売。保険ショップもインターネットによる事前予約が主流になっています。
さらにインターネットによるファイナンシャルプランナーの紹介サービス。もちろん従来型の一社専属の生保レディや保険営業マンが入り乱れて生命保険についての消費者へのサービスを競う時代を迎えています。
あらためて考えてみると、金融ビッグバンと言われた日本での金融自由化の流れとIT技術革命がこのような生命保険における厳しい競争社会をつくったのです。そして、それは消費者の利益となったのです。
昔の保険業界は護送船団方式という保険行政下でした。一番体力のない保険会社(船)でもつぶれないように(船団から送れないように)と、旧大蔵省は全保険会社の生命保険の保険料を一番体力のない保険会社にあわせて設定します。そして保険会社に対して絶対的な権力を旧大蔵省が握っていました。それが護送船団方式での保険行政でした。
どの保険会社でも保険料は一緒。保険商品も名前が違うだけで保険商品も同じ。もちろん配当金もすべての保険会社で同じ。また保険の比較も実質的に禁じらていました。保険料は高値で安定することとなり生命保険会社はどこも儲かりました。金融自由化がされなかったからなのです。そのために消費者は高い保険料を払い続けました。
今では様々な競争が起っています。保険商品も保険料も競われています。生命保険の販売の仕方も変わり続けました。
金融自由化とIT革命の成果を、消費者が利益として受け取ることになったのです。金融自由化は生命保険業界にメリットを与えたのではないのです。
ただ保険選びは面倒になりました。昔は保険比較の選択肢も保険相談のチャンスもありませんでした。言われるままに生命保険に入りましたし、どの生命保険商品も差がなかったから、それで損はしませんでした。今は面倒な保険選びをしないといけません。自分で考えて行動しないと損をする社会です。
それが自己責任という言葉なのでしょう。自分で考えて自分で行動して自分に有利な生命保険を選びましょう。